「ぼくの大切なともだち」

日曜の夕方、楽しみにしていたルコントの映画を見に行く。友だちのいないことに突然気がついたおっさんが、友だち作りにあたふたとするコメディである。だけどこれがなかなかの曲者で、そう一筋縄でないストーリーだ。要は、親友と呼べる人がいないからといって孤独かというと、そういうわけでもなく、実は身近にいる人の方がずっと孤独を味わっているということ。その事実に気づくことのできない鈍感な人は、かえって幸せなのかもしれない。だからこの映画、友だちが出来てよかったよねというお話でなく、心やさしい人たちに囲まれたおめでたい男のドタバタ劇として観てしまった。

劇中で、「星の王子さま」の王子とキツネの有名な会話が出てくる。キツネが王子に向かって「僕を飼い馴らせ」というあれだ。友人になるには、積極的に関係を構築しろという意味らしいのだが、キツネが何のメタファーかを想像すると、それが単純な友人獲得術を意味しているとは考えにくい。「感じのいい人」になれば友人が出来て幸せになる、というほど人生は甘くないのだから。

さて、偉そうにいうお前に親友はいるのかと問われると、それははなはだ心許ない。少なくとも、竹馬の友と呼べる人はいないが、逆境を分かち合った人はいる。その彼の頼みだったら、何でもしてあげたいと思うが、そこはやはり典型的な日本人なので彼からそれを口にすることは決してないだろう。そして、わたしだって、彼に無理な頼みをするくらいなら、黙って苦痛に耐えるだろう。とすれば、結局のところ、世間一般に親友と呼ぶにふさわしい人は居ないのかもしれないと思う。

いつもだったら8割以上が女性客で占められる名画座だが、この映画に限っては、妙に中年おやじが目に付いた。皆さん、そんなに親友に飢えているんだろうか。不思議である。

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