
行きつけの古本屋で広辞苑を探してみると、タイミングよく、使われた形跡のない第四版が格安で売られていた。最新版でなくても不便はないので、早速に連れて帰り、硬くなった装幀をほぐして、本が滑らかに開くように躾ける。この辺りは、小学生時代の恩師の教えが、未だに生きている。配布されたばかりの教科書を、扉が正しく開くように、丁寧に折り返しを付け、それから背表紙にも折り目を入れて、読みたい部分が即座に開くようにするのである。三つ子の魂百まで、だ。
ちなみに装幀デザインは安井曾太郎。緑を含んだ明るい青の表紙に、水辺の草の模様が浮き出ていて、何ともいえず上品な和風。一方の大辞林は、金糸の入ったカーテン生地のような模様が特徴。ライバルに、いまひとつ及ばないところがあるとすれば、そのセンスの違いかもしれない。広辞苑の方は、初代から最新版までずっと同じ装幀で、日本を代表する国語辞典としての、定番商品のプライドが感じられるのだ。
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