2008年1月31日木曜日

広辞苑のこと

これまで、国語辞典といえば大辞林を愛用していたが、パソコン等の事務機器が占拠する机で使用するには大きすぎるきらいがあった。先日、本屋でそれよりは一回り小さな広辞苑を手に取って、その使い勝手をみてみると、紙質といい活字の具合といい、わたしにはちょうど頃合いの印象を得た。もともと広辞苑を嫌っていた訳ではなく、それがメディアなどで頻繁に引用されることが多く、ちょっとへそ曲がりの虫が騒いで大辞林を使っていただけなのである。

行きつけの古本屋で広辞苑を探してみると、タイミングよく、使われた形跡のない第四版が格安で売られていた。最新版でなくても不便はないので、早速に連れて帰り、硬くなった装幀をほぐして、本が滑らかに開くように躾ける。この辺りは、小学生時代の恩師の教えが、未だに生きている。配布されたばかりの教科書を、扉が正しく開くように、丁寧に折り返しを付け、それから背表紙にも折り目を入れて、読みたい部分が即座に開くようにするのである。三つ子の魂百まで、だ。

ちなみに装幀デザインは安井曾太郎。緑を含んだ明るい青の表紙に、水辺の草の模様が浮き出ていて、何ともいえず上品な和風。一方の大辞林は、金糸の入ったカーテン生地のような模様が特徴。ライバルに、いまひとつ及ばないところがあるとすれば、そのセンスの違いかもしれない。広辞苑の方は、初代から最新版までずっと同じ装幀で、日本を代表する国語辞典としての、定番商品のプライドが感じられるのだ。

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