「クローディアの秘密」

大貫妙子の「メトロポリタン美術館」を聴いていて、歌詞の描く情景に懐かしい既視感を覚えた。バイオリンのケース、トランペットのケース、トランク代わりに出発だ♪気になって調べると、やはりあった。カニグズバーグの児童小説、「クローディアの秘密」である。

あらすじは、12歳の少女が弟を連れて家出して、メトロポリタン美術館内に潜伏するが、そこで天使の彫像に関心を持ち、作者の秘密を解き明かすという内容。といっても謎解きがテーマでなく、いわば家出少女の成長物語。上質な児童小説だが、大人でも十分に楽しめる、洒落た都会派小説でもある。家出を幾度も計画して、それが夢のままに終わった人に読んでもらいたいし、そうでなくとも、たとえば美術館の収蔵品を一晩だけでも独り占めにしたいという野望を抱えている大人にも薦めたい。そんな小説だ。

それでちょっと思ったが、子どもの成長に冒険や秘密を持つことが欠かせないのならば、家庭という場所は、子どもにとって居心地のいい場所とはいえないくらいの方が理想的なのかもしれない。映画「スタンド・バイ・ミー」でも、少年たちの家庭は決して幸福なものではなかったし、それが仲間の結束と強め、冒険の原動力となった。子どもを育てるということは、親を含めて周囲がどうこうできるものではなく、子ども自身の生命力で殻を突き破るのを、じっと待ち続ける作業なのだろう。

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