今夜の一枚

夕暮れが早くなった。いつもより短かった今年の夏も、もう終わりである。仕事して、ビールを飲んで、ほろ酔いで音楽を聴き読書をし、最後にシャワーを浴びて寝る毎日。ほかの季節との違いはビールの量くらいだろう。

季節によって聴く音楽にもくせが出る。この季節は蒸し暑いから、適度な緊張感を必要とされるジャンル、クラシック音楽とか現代音楽は聴く気がしない。やっぱりジャズかなあ、酔って、適度にうたた寝しながら聴いて楽しいのは。別に無我の境地で聴いているのではなく、いろんなコトを思い出しながら、たとえば夏のオールナイトコンサートの様子や、「大文字の送り火」を缶ビール片手に見上げていたことや、真夏に見た映画のことや、そんなとりとめもない記憶の切れ端をパッチワークしているのだ。

今夜聴いているのは、ビル・エヴァンスの「アフィニティ」である。新譜の輸入盤が出たとき、ジャケのデザインは最悪だったが、トゥーツ・シールマンスが入っていたので、迷わず買った記憶がある。最初の頃は手持ちのアルバムが少なくて、飽きもせず繰り返しよく聴いたものだが、そのうちに夏専用になってしまった。このアルバムを色で表すと、限りなく黒に近い紫、もしくは深く沈み込む群青かもしれない。甘くロマンチックなシールマンスのハーモニカとアイロニーを含んだエヴァンスのピアノとの優雅な絡み合いが、たとえようのない魅力を醸し出している。きわめて辛口でありながら、しかも芳香豊かな、晩夏にこそ似合うジャズの名盤だと思うのだ。

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