父の万年筆

今年になって万年筆を使うようになった、と書きました。
あれからというもの、ボールペンは必要に迫られたときのみ、従来パソコンに打ち込んでいたテキストも、ごく私的なものは万年筆で手書きしています。
以前は万年筆を使うと決まって肩が凝ったものでしたが、現在はまったく苦痛ではなく、むしろペンを滑らせる心地よさを感じます。
おそらく今後も、ずっと万年筆を使い続ける、、、そういう確信が湧いています。

実家の母に、父の万年筆を送ってくれるように頼みました。
「あー、それは良いことよね。お父さんもきっと喜ぶわ。」
そして思いがけない言葉を耳にしました。
「あんたもお父さんのような字書くから、きっと使いやすいのじゃないかしら。」
「あれっ、そうなの?!」と聞き返すと。
「やっぱり親子なのよねぇ。」と・・・。

父は達筆で鳴らし、子供の頃から習字で幾つも賞を取り続けた人で、自分はそうでないことがコンプレックスでした。
そういう父の字と、わたしの字が似ているといわれて、我が耳を疑いました。
現に学生の頃、頻繁に手紙を出した相手に、「atoくんの字、あんまり達筆で読めないときがある。」と言われて苦笑いしたこともありましたっけ。
あの野郎、知ってて今の今まで黙ってたな。今度戻ってきたらとっちめてやる(笑。


桐の箱に収まって、父が最後に愛用していた万年筆が届きました。
大振りの、無骨というかとてもクラシカルな万年筆でした。
箱の中には解説書が入っていて、ベテランの職人達の手作りだということが分かりました。
その職人達、明治生まれが二人、大正生まれが二人と、それだけでひとつの歴史が書けそうな顔ぶれです。
そして工作精度が凄い。
エボナイト棒を削りだした万年筆の軸には何ら手がかりがなく、当初どうやってインクを入れればいいのかまったく分かりませんでした。
解説読んでからも、一体どこを回せばいいのかしばし戸惑ったほどです。

書き味には目立った癖はないものの、金ペンのわりにはちょっと硬めかな。
父が70代に入って買い求めているので、たぶん頻繁に使う機会がなかったのでしょう。
これから息子が引き継いで、自分にあった使いやすい万年筆に仕立てます。

写真で見ると、ペリカン(下)より一回り大きい程度ですが、実際に持ってみるとずいぶんと太く感じます。それに重量感もある。
イメージでは万年筆でなく、ほとんど筆ですね。
だから普段からジャケットの内ポケットに挿して実用的に使うというより、机上のペン皿に常置して、静かな心持ちで手紙を書いたり、日記をつけるのに適している。
そういう万年筆です。

コメント

  1. きっとダンディなお父様だったのですね。
    atoさんがしっかり受け継いで、お父様もそして万年筆もお喜びでしょう。
    うちの父はあまり筆記具に興味がなかったのか、そういうものはありませんが、自動巻き出たての腕時計だけ残してくれました。
    ずっと使っていたのですが、クオーツが出たときに買った際に、動かさないと停まってしまうのではないかと、いつも数分間腕に付けて巻いていたのが思い出されます。
    今では自分の愛用品です。時間は相当狂いますが・・・。

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  2. ギャンブラー11.3.14

    ペリカンの万年筆、いいですねぇ。手作り万年筆、もっといいですねぇ。
    私も万年筆党で、ペリカンのスーベレーンを持っていますが、仕事でいつも使っているのはシェーファーの普及品で、値段は千円以下だったと記憶しています。このあたりが万年筆の面白いところで、手に馴染むのは何も高級万年筆とは限りません。一方で、高級万年筆のあのフォルムに魅了されて、どうしても手に入れたくなることも事実です。

    来年の還暦のお祝いに、手作り万年筆を自分にプレゼントしようかな、とatoさんの文章を読んで思いました。

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  3. leftyさん
    いいですねー、私はそういう時計に強く興味を引かれます。
    狂わないのが当たり前の時代に、よく狂う時計とはなんとエレガントなのでしょう(笑。
    かねてから、モノの価値はそれがどれだけの物語を持っているかということに尽きると考えてます。
    その点、leftyさん愛用の時計は、きっといろいろな物語を語りかけてくれるのでしょうね。
    私の時計もかつて敬愛した人のものだったので、何となく想像がつきます。

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  4. ギャンブラーさん
    元野球少年にして、競馬ファン。そして文学に造詣が深いとなると、決まってある無頼派の作家を連想します。
    そのような方には、やはりキーボードは絶対に似合いませんね。
    やはり不器用で頑固な職人が作る、手作り万年筆がぴったりではないでしょうか。

    私の名無しの万年筆ですが、その製作風景が出てました。
    http://members.jcom.home.ne.jp/fullhalter/deai06.html
    お暇な時にでもご覧になって下さい。

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  5. URLは大井町のフルハルターですね。
    通勤途中駅でもあり、魅力的な飲み屋街があるので、月に1回は寄って(酔って)いますが、いつか訪れ、求めたいと思っているお店です。
    でも、最近は手帳ぐらいにしかまともな文字を書かない自分。しかもフリクションボールという便利過ぎる悲しい筆記具です。

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  6. ボールペン派だった私には馴染みのない店でしたが、ずいぶんと有名なところのようですね。
    その大井町近辺は、歴史があり、そして適度な高低差もあって、とても魅力的な場所です。
    残念ながら、これまでクルマで通過するだけで歩き回ったことがありません。
    最近は高層ビルが建ち並びだして、以前のような風情が薄れてきている気がします。
    呑兵衛としては昭和の面影が残る今のうちに、徘徊したい場所であります。

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  7. 今日の朝日新聞の夕刊に、「ヤミ市若者そそる」というタイトルが一面トップに出ていました。
    ・上野アメ横商店街
    ・新宿ゴールデン街
    ・ニュー新橋ビル地下
    ・渋谷のんべえ横丁
    ・蒲田西口商店街
    ・赤羽一番街商店街
    ・大井町東小路飲食店街
    ・三軒茶屋エコー仲見世商店街
    以上が表で紹介されていました。
    下北はほぼなくなってしまっているし、このような風景が再開発に飲まれていってしまうのは悲しいです。
    話題がそれてしまい、失礼しました。

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  8. どんなコメントでもどうぞ気になさらず書き込んで下さい。

    三茶のエコー仲見世商店街があったので、昔話をさせて下さい。
    学校を出て上京し、最初に居を構えたのが三茶でした。
    当時は、都心に近いにもかかわらず閑静な学生街で、下町の風情あふれる暮らしやすい場所でした。
    早春のちょうど今の時期に越してきたのですが、初めて迎えた夜に晩飯を求めて街に出たところ、ほとんど人通りがなくてずいぶん寂しいところだというのが第一印象でした。
    今では下北沢に負けないくらいの歓楽街になってしまい、私にとって縁遠くなった分、当時の街の様子を懐かしく思い出します。
    仲見世商店街も、当時とはかなり入れ替わってますよ。

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