2011年9月25日日曜日

曲がり角の向こう側

原発を廃止するとしても、当面は原発以外の既存発電所で電力需要に対応しなくてはならない。自然エネルギーを活用する新しい発電所が建設されるまで、おそらく10年以上はかかるだろう。日本はエネルギー自給率が極端に低い国だ。原子力を含むと18%、含まなければたったの5%。つまり原発を廃止するということは、他国に比べてより重いハンデを背負って競争し続けなくてはならないということを意味する。そして競争に勝てば、これまで通りの豊かな生活を享受できるかもしれないし、強い国力を背景とした平和も維持できるだろう。もし負ければ世界的な資源インフレに巻き込まれ、食料の確保すら難しくなる。また、やる気満々の周辺諸国の挑戦を招く可能性も否定できない。

そして更に、それ以上にやっかいな問題が持ち上がっている。石油の生産量がすでにピークに達し、これから石油供給量が激減していくと予想されていのである。つまり石油に支えられた世界経済そのものが成長力を失い、限られた資源を廻って国家間の緊張が高まることを意味する。ただでさえ食料、資源、エネルギーの自給率が低く、加工貿易で食べている我が国にとっては、石油が確保できなければ、経済活動はもとより社会の秩序さえ失いかねないのである。その影響の大きさは、原発問題を遙かに上回るだろう。思うに、福島第一原発事故が収束に向かうより先に、ピークオイル問題がわたしたちの生活に想像もしない大打撃を与えるのではないかと考えている。

テレビも新聞も、毎日のように原発事故と放射性物質の問題を議論している。確かにそれらは間違いなく重大な問題だが、単純な事故災害の問題ではなく、確実に到来する石油文明の終わりと関連づけて議論しないと、本来救えるべき人たちまで救えなくなるのではと憂慮している。3.11はすべての日本人に深刻な問題を突きつけ、歴史のコーナーを大きく曲がろうとしている。そしてその先に見える風景を、どれだけの人が想像しているのだろうか。

2050年は江戸時代」、石油文明が終わったあとの日本人の暮らしを考えるに、様々なヒントを与える良書である。ここに描かれる社会は、もしかするとベストシナリオかもしれないと思う。

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