2014年10月8日水曜日

ルーレットゲーム

木曜夜10時頃、食事中に下腹部の鈍痛を感じる。
最初はただの膨満感と思ったものの、次第にことの異常に気がつく。
その夜たまたま食べていたのが、数日前に作った煮込みだったので食中毒を疑い、直ちに整腸剤を服用してからトイレに駆け込む。
とにかく出るものは、すべて出してしまいたいという一念。
たが、いつまでも下痢の兆候は現れない。
むしろ痛みだけが直線的に増大する。

下痢でなければ、明らかにおかしい。

2時間を経過したあたりでトイレから出て、強い痛みに耐えながら、インターネットで考え得る病名を探し始めた。

その結果、腸閉塞か、結石あたりが濃厚に。
年齢的には、結石の痛みと考えるのが順当である。
しかし現実は、普通の健康な排尿があるのでとりあえず却下。

残るは腸閉塞。原因を含めて、これはちょっとやっかいだ。
その時点では自分自身には一番考えにくい症状だった。
なぜなら、毎日、快調に排便しているので、腸が閉塞しているということ自体が納得できない。
肉はあまり食べず、毎日が大豆食品と野菜が中心の食生活なのである。

なんであるにしろ、この痛みは自宅で解決できるレベルではない。
選択肢は、このまま朝まで待ち、通い慣れたホームドクターの診察を受けるか、直ちに救急病院に駆け込むかのどちらか一つ。
予想に反して大袈裟な病気でない場合だと、ご近所の手前、やはり救急車は使いたくない。
それに安易に救急車を呼んで、運悪く設備やスタッフの貧弱な医療施設に搬入されると後々やっかいである。

この点、ホームドクターだと、信頼はできるが、外科手術に対応できないのが致命的。
もちろん直ちに信頼できる病院を紹介してもらえるが、実際に施術するまでに時間がかかりすぎる。
これで手遅れになると最悪の結果に、場合によっては命に関わる可能性が排除できない。

となると、贅沢を言わずにとりあえず最低限の設備とスタッフがそろっている病院に、直ちに連れて行ってもらうのが正解ということに。
何よりも決定的だったのは、体力的にもう猶予がないレベルにまで到達したため、診察開始時間を待つゆとりがなかった。
発症から5時間後、ついに119番通報して救急車にきてもらう。
事前に、近所まできたらサイレンを消すことを了承してもらった。
いい病院か、そうでない病院に送られるか、一発勝負のルーレットゲームである。


午前3時半、連れて行かれた先は、自分の考えるベストではないが、かといって避けるべき理由もない総合病院だった。
すぐに当直スタッフ数人が駆けつけ、慎重な問診の後、レントゲン検査とCT。
得られた画像から、間違いなく腸閉塞と診断される。
診察台に仰向けになったまま、何枚もの承諾書にサインをする。
外科のスタッフが全員そろう朝9時から緊急手術。
「これから麻酔をかけますよ。」という声を聞き終える間もなく意識を失い、次に目を開けると不安げな妻の顔がそこあった。
後もう少し遅ければ、大手術になるところだったという。

病気としては珍しいので運が悪い(医師もそれに近い表現をした)、しかしルーレットには勝ったので運は残っていたといえる。
差し引きゼロ。
たまたま同室の患者は、先に悪い目の方を引き当て、運のない展開になってしまっていた。

悪い噂を聞いていたわけではない。
何度かその病院のまえを通り過ぎただけなのだが、そういう雰囲気が滲み出ていたのである。

6 件のコメント:

  1. ギャンフラー8.10.14

    何はともあれ大事に至らず(手術をしたのですから「大事」かも)良かったですね。
    私も急性膵炎になったとき、生まれて初めて自分で救急車を呼びました。結果的にはそれで命が助かったようです。atoさんや私のような控えめで慎重な(?)性格の男は、ダメだと思ったら躊躇することなく他人の助けを借りるべきかもしれません。お大事に。

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    1. ギャンブラーさん、どうもです。
      痛みにのたうち回った夜、私、ギャンブラーさんの書かれた記事を思い出してました。
      いつかは自分も体験するだろうという漠然とした予感があり、
      そしてとうとう、自分のところにも巡ってきたんだなぁ、というふうに。
      連れ合いが居た分だけ、不安感はそれほどありませんでした。

      ご心配いただき、ありがとうございます。

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  2. 自分は、先月、結果的に大したことのないギックリ腰を初体験しました。いろいろなことが起こる年齢に差し掛かり、atoさんの実体験に触れ、自分には自宅周りに信頼できる病院がないことを再認識しました。
    強いて言えば、友人が医薬品の卸をしているので、彼に聞けば症例数の多い病院を聞けることぐらいです。
    どうぞ、お大事にしてください。

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    1. leftyさん、ありがとうございます。
      おかげさまで週末には退院できそうです。

      leftyさんも私同様、大病とは縁のない方じゃなかろうかと推察しますが、それだけに油断禁物ですね。
      いざというときに備えて、普段から雑誌掲載の名医リストなどに関心を持たれることをおすすめしたいです。
      私にはその甲斐あって、身内の大病に迅速に対応できた体験があります。

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  3. links_7713.10.14

    atoさん
    ひさびさのレスですが、お大事にして下さいませ!

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    1. links_77さん、お久しぶりです!
      ご心配をおかけしましたが、無事退院できました。
      あと数日静養すれば、復帰できそうです。
      ありがとうございます。

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