院内読書


術後、消灯時間以外は決して横にならないよう努めました。
起きている間は、ベッドに腰掛けて読書をするか、文章を作るか、もしくはがんばって歩くか、疲れたら食堂のいすに座りぼんやりとしているか。
おおざっぱに言って起きている間半分以上を、読書して過ごしました。
強制的に休まされるというのは滅多にあるものじゃありませんから、せっかくなので存分に楽しませてもらおうというわけです。

用意していた本をあらかた読んで、さて次はどうしようかという入院3日目。
病院内に入院患者用の図書室があるのを知り、退屈しのぎに体にまとわりつくチューブを引きずって探訪してきました。
図書室は資料庫を転用したような感じの部屋で、1000冊あるかないかという程度のもの。
ジャンルに偏りがみられるので、きっと寄贈する人が多いのでしょう。
しかし文庫本から単行本まで予想外に充実しています。
その筋の人の持ち込みでしょうか、不思議なことに大江健三郎全集まであり、高校の頃に読んだ「万延元年のフットボール」を懐かしさのあまりページを繰っておりました。
読み返そうと思いながら、これまで読み返すことはなかった本でした。

そうした中で見つけたのが、米原真理の書評集、「打ちのめされるようなすごい本」。
短い滞在の記念に一番ふさわしく思い、この本を借り受けることにしました。
これまで読みたいと思いながら機会がなく、おまけに返却期限のないのが素敵!

何が読みたいのかわからなくなったり、読書がマンネリ化したときに、私は書評集を手に取りますが、世評通り、米原真理の書評は出色のおもしろさでした。
米原のスタイルは、ジャンルに選り好みがない代わりに、自分の関心を引いた角度から本をすっぱりと切り落とす潔さにあると思う。
快刀乱麻を断つが如し、というマッチョな風情にして、勇敢で誠実な書き手への限りない敬意も存分に感じられ、評論のための書評になっていないところが高く評価されるのでしょう。

すばらしい書評家である前に、すばらしい読み手を失ったことが、返す返すも悔やまれます。

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