「割り箸はもったいない?」

「割り箸はもったいない?」 田中淳夫

読み終わって一番感じたことは、環境問題は単純でないということ。割り箸は使い捨てだから資源の浪費だ、だから環境に良くないという論理の跳躍をいとも簡単に許すのが環境議論の特徴である。本書はその点に着目して、割り箸の歴史、業界の現在、林業の構造、森林保護のあり方など広く目配りしながら、その論理の粗雑さを丁寧に正している。

論点が多岐にわたるため端折って書かざるを得ないが、割り箸は環境問題としてはシロ。現在は中国からの輸入に頼っているが、自然林を伐採しているのではなく、成長の早い木を植林したものから作られている。そして中国における材木の全消費量の内、日本向けの割り箸が占めるのは0.09パーセント。環境破壊どころか、むしろ現地の雇用に貢献している。そして中国ではじゃんじゃん森林が減少しているような印象があるが、実態はその逆で人工林は急速に増えている。そして現在では日本が木材を輸出して、中国で割り箸に加工してもらい、日本で高級割り箸として使われているとう例もある。

おそらく、アンチ割り箸派のこだわりは、使い捨てにするという点だが、これはほぼ感情論の領域である。どんなものにでも存在理由があり、プラス面とマイナス面が同居しているものだ。それが極端にアンバランスでない限り、社会的に許容できるのは当たり前である。

環境保護の見地からは森林を維持、拡大するのは大切なことだ。そして人工林は適切に運営されることで自然林以上に環境保全に役立つことが証明されている。しかし林業はきわめて投資期間が長く、経営を成り立たせるためには、短期的で継続的な収益源も不可欠である。そこで建築資材のような大きな用途だけでなく、日用品などの小さな用途も欠かせない。ところが日本では戦後、その日用品の素材が木材以外に移ったことと、木材が価格競争力をなくしたため自国の林業が衰退してしまったのである。

そして日本の森林問題と世界の場合はまったく話が違っていて、世界は乱伐が問題になっているのに、日本は増えた森林が伐採されないことが問題となっている。つまり日本の森林は利用されないことで「緑の砂漠」となって、かえって環境に悪い影響を与えているということなのだ。だから日本の森林保護のために積極的に木製品を利用して、その中の一つとして割り箸を使うということもアリなのである。

「割り箸はもったいないか?」と問われれば、わたしは、やはりもったいないと思う。わたし自身はモノを捨てられないたちなので、必要なとき以外割り箸は使わないし、上等の割り箸などは持ち帰って更に使うが、だからといってそれが社会的に「正しい」行為だとは思っていなかった。割り箸を使う状況があればそれを楽しめば良いし、それが嫌なら割り箸を使わずにいる、ただそれだけの個人な生活習慣に過ぎない。これから、それを自信を持って言えるようになったのは収穫である。本書は日常生活の素朴な感情論を超えて、環境問題の適切な考え方を示した点で、実に示唆に富む本だと思う。

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