オンリー・イエスタデイ


マネーの世界に吹雪が吹き荒れている。信用収縮を止めるために、各国の中央銀行は9.11以来の大掛かりな資金供給を続けているという。政府は、実体経済はしっかりしているので大したことにはならんでしょ、とアナウンスしているが、それはちょっと信用できないのだ。すでに京という単位にまで膨張したマネーが瞬時に動くような時代には、マネーが実体経済に及ぼす影響は計り知れないはずだから。

マネーの本質は、それ自身が最大限に増殖しようとする貪欲さと、損失を恐れる恐怖にある。それはまさに人間の本性の反映なので、マネーは楽観と悲観を振り子のように揺れ動く。これまではマネーのもたらす軋みを、楽観が様々な理屈を付けて無視して来た。しかしこれからは、実体経済を無視した悲観が世界を覆うかもしれない。そしていつの時代だって、お金に縁のない庶民の生活までも容赦なく痛めつけるのが、マネーに支配される世界の掟なのである。

世界恐慌は暗黒の木曜日から始まったが、本当に大変な状況になったのはそれからずっと後だったという。つまり楽観と悲観を繰り返しながら、誰も想像しなかった最悪の状況に転落していったのだ。そしてその時の悲惨な体験は、経済の世界ではむろんのこと、映画や文学などで戒めの物語として繰り返し語られてきが、今ではそういう物語を見ることもなくなった。

「オンリー・イエスタデイ—1920年代・アメリカ」

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