上野の森を展々と

展覧会のはしごは疲れるので避けたいところだが、開催場所が隣同士ならば仕方ない。おまけに時間も限られているというわけで、上野の森で美術館巡りをした。

午前は東京都美術館の「トプカプ宮殿の至宝展」。門外不出のトルコのお宝工芸品を展示しているが、予備知識なしで見たせいか、期待イメージとのギャップでいまひとつという感じ。ダイヤだルビーだサファイアだと言われても、原石からほじくり返してそのまま貼付けたような細工では、せっかくの素材が生きてこない。素人の感想なのでいい加減なものだが、お宝の基準がキロ幾らという質量で決まるような実務的な気風を感じるのだ。資料的な価値はあるのだろうが、総じて物欲を刺激されるようなものはなかった。

東京都美術館を出たのが昼過ぎ。ランチをしたいと思うが魅力のあるところを知らないので、例によってベンチに座って水筒のお茶とキャンディーで空腹をしのぐ。いつも思うのだけど、せめてドトールかサンマルクカフェがあったらとても助かるのだが。

午後は藝大美術館の「金刀比羅宮 書院の美」展。気分としては午前は曇り、午後快晴。いやあ、どれもこれも楽しい、楽しい!応挙のネコ、もとい虎のかわいらしさには周囲から笑い声が聞こえるくらいの大人気。そして岸岱の襖絵の大きく伸びやかなこと。ニッポン大好き。お目当て伊藤若冲、アクリルの保護板一枚を隔てた距離で、その肉筆を鑑賞する。「花丸図」の凄みすら感じる精緻で贅沢な花々、問答無用の迫力だった。金刀比羅宮の書院を再現するという企画なので、滅多に見ることの出来ない金刀比羅宮の書院をいわばバーチャルに楽しめるという特典付き展覧会だった。

同時開催していた「芸大コレクション展 歌川広重《名所江戸百景》のすべて」も、非常に充実した内容。広重のきわめてモダンな美意識に支えられた江戸の情景は、現実を飛び越えて空想世界と呼ぶべき不思議な魅力を放っている。じっと作品に見入ってると、通りを行き交う人々のさざめきが聞こえてきそうで、ふっとその時代にタイムスリップした気になるのだ。広重を模写したゴッホは、その作業を通して江戸の世界で無心に遊んでいたのではないだろうか。

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