2007年9月22日土曜日

プラスチックのポット


この十年くらいで洒落た日用品を扱う店が激増して、とても便利になったのはいいが、どこもかしこも似通った品揃えで食傷気味である。せっかく時間を作って訪ねていくのだから、客をわくわくさせるような、よそとは違うんだという明確な個性を発揮してほしい。それから、数少ない商品をちまちまと並べるのではなくて、雑然と積み上げるくらいの心意気が必要だ。雑貨屋なのだから、客に発見する楽しみを与えないと、すぐに飽きられると思うのだ。ここのところ都心の日用雑貨店を見て回る機会があったが、空振り続きで文句のひとつも言いたい気分になってしまった。

インターネットもなく、何をするにも今よりずっと不便だった頃、優れたデザインの日用品だけを扱うという、明確な主張を持った店は都内でも数えれるほどだった。それだけに、逆に店の個性もはっきりしていて、こういうものが欲しければあそこに行けばきっとある、という信頼があった。そして、もしそこになければ、どこに行ってもないという諦めもついた。ある意味、モノ探しは今よりずっと楽だったと思うのだ。

そんな信頼を置ける店が、以前暮らしていた町にもあって、所帯を持った当初は、いつかはこんな暮しをしてみたいという憧れを育んだものだった。写真はその当時、その店で一目惚れして買った、ノーブランドのプラスチック製ポット。見るからに安物だけど、そのシルエットの美しさに、コロッと参ってしまったのだ。本来は油などを入れる容器なのだが、それではもったいなくて、ずっとペン立てとして使っている。そのお気に入りの店は、既にもうない。

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