2007年12月27日木曜日

オスカー・ピーターソン

ジャズ・ピアニストのオスカー・ピーターソンが亡くなった。82歳だったという。

試しに、Amazonで検索してみて欲しい。ピアニストとして半世紀以上にわたって活躍し、そこには膨大な作品が残されている。そして、高齢になった最近まで、ずっと現役であり続けた人である。もちろん全部聴いたわけではないが、きっとどの作品も楽しく、美しく、聴く人の心を引きつけるはずだ。

ただ残念なのは、いわゆる通と呼ばれる人たちからは、彼がいつも愛想が良く、サービス精神の旺盛な点をとらえて、「ゲージュツ家」としてはちょっと低く見ているような空気を感じるのだ。どうしてだろう。「ゲージュツ」は暗い顔して、一般人には近寄り難いような、難しいものでなくてはならないのだろうか。捻くれた、独りよがりの「ゲージュツ」よりも、たくさんの人たちを、明るく楽しませる演奏のほうが、ずっと価値があるようにも感じるのだ。

その点は措いておくとして、オスカー・ピーターソンが偉大だったのは、なによりモダンジャズの素晴らしく卓越した教師だったことにあると思う。それは特に、ジャズボーカルの伴奏者として演奏したときに強く感じる。ジャズの歴史に名を残した、素晴らしいボーカルアルバムの共演者には、必ずと言っていいほどオスカー・ピーターソンの名前が刻まれている。そして、その名前をたどって様々なアルバムを聴いていけば、モダンジャズとは何なのかを、こ難しい理屈を抜きにして、自然と身体で理解できるようになっている。それは、複雑で迷路のようなジャズの森の中を案内する、名ガイドのようなものだ。そして、長い年月にわたり、立派にその役割を果たしたジャズ・ミュージシャンを、わたしは他に知らない。

ジャズって何なのかよく知らない、でもちょっと聴いてみたいという人のための、この一枚。
・「イン・テューン
高校生の頃、偶然にその中の一曲「セサミストリート」をラジオから聴き、師に手を引かれるようにジャズを楽しむようになったきっかけを作ったアルバムである。驚異的なコーラスの美しさと、オスカー・ピーターソンの華麗なピアノ。もしも若い友人から「ジャズって何?」と訊かれたら、何枚か差し出すアルバムの一枚に、必ずこれを入れたいと考えている。

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