渋谷まで

渋谷に用事があり、しかし急ぐ必要もないので、ちょっとしたエコゴコロを起こして、歩いて行くことにした。本来だったら、裏道を楽しみながら歩くのだけど、大通り周辺の景色が変わってきているので、排気ガスを我慢して大通り側を歩くことにした。今までは車か地下鉄で移動するだけで、渋谷までの数キロは、わたしにとっては未知の土地である。

自宅からだと汗をかいて大変なので、ズルをして三宿から歩き始める。三宿といえば、以前はなにもないありふれた住宅街という印象で、古本屋と喫茶店が記憶に残るくらい。それがいつの間にか、小洒落た飲食店が建ち並び、休日ともなると他府県ナンバーの車で混雑するようになった。特別魅力のある土地でもないのに、どうしてそうなったのか、今もってその理由を知らない。

一番の関心事は、池尻大橋の交差点にある再開発地域。脇を抜けるたびに見ようとするが、車の運転席からは、一向にその様子が分からない。灰色の構造物がどこまで大きくなるのか、好奇心で一杯なのである。交差点の歩道橋の上に立ち、真正面に見てみると、窓のないコンクリートの巨大な塊が、周囲を威圧するような感じ。比較するのも変だが、国が滅んだあとも、ここはローマのパンテオンみたいに、巨大な遺跡として残りそうな気がする。後世の人たちは、地下から空中に延びる回廊を、夥しい自動車が高速で移動する様子を、どのような気持ちで想像するのだろう。

池尻大橋の坂を登り、南平台の交差点を抜け、そこから神泉に下る。わたしは、初めてここを訪ねた時から、この土地が気に入らなかった。ものの本によると、古い時代には、典型的な「ケ」の場所であったらしく、その土地の発散する気分が未だに残っているのかもしれない。陰気な踏切を撮影して、とっとと退散する。

その先にあるのが、お目当ての場所。地下の静かな書店で、しばし時間を過ごし、用事を済ませて店を出る。さて、最後の関心事は、新しくなった地下鉄の駅である。テツとしては、新しいうちにぜひ見ておきたかったところ。東急文化会館跡からエレベータで地下に下りると、そこはいきなりSF未来都市。湿気のこもった古く陰気な土地からわずかの場所に、平衡感覚を失いそうなほど清潔な未来的風景がある。その落差が、とても東京的だ。


一番気に入った場所。

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