2008年8月7日木曜日

グーグルの連れてきた未来

パソコンを使い始めて20年以上になる。最初に使ったソフトは、ワードスターというアメリカ製の英文ワープロソフト。便利だなあ、という程度で、特別な感慨はなかった。ないと困るが、でも何かと置き換え可能な、高価な文房具というのがパソコンの印象だった。もちろんパソコンでゲームもやってみたが、あまり関心がなかったのですぐに飽きてしまった。パソコンは仕事で使う、そういう時代が10年くらい続いた。

ちょっと凄いぞと思い始めたのは、電子メールやインターネットを利用し始めてからである。自宅で居ながらにして大量の情報を取得できるようになって、パソコンが日常生活の必需品となり、ここでようやく新しい時代の到来を実感した。ホームページに書かれた旅行記を熱心に読むようになり、電子メールで情報交換するようになった。そして、このころからテレビを見る時間が徐々に減っていった。しかし、自分が必要な情報を探すのに、多くの手間とコストがかかり、パソコンはまだ未熟な情報機器だといえた。

21世紀に入り、本当の意味でのインターネットの恩恵を受けることができるようになった。新型検索エンジン、グーグルの登場である。忘れもしない2001年の春、グーグルを使ってニューヨークのホテルを探しオンラインで予約を済ませ、同様にブロードウェイにある劇場の座席を確保した。ガイドブックも購入せず、電話やファクシミリも使わず、インターネットだけで旅行の準備のすべてを済ませることが最初の経験である。このころから、図書館のオンライン予約も当たり前となって、こうできたらと夢想していたことが現実のものとなった。

数年前から、グーグル・マップとアースで旅先の現地情報を視覚的に知ることができるようになり、その使い勝手の良さに拍車が掛かってきた。収集した情報はすべて向こう側に置いて、それを旅先で確認できるようになり、旅行ガイドブックも完全にいらなくなってしまった。何千キロ先の町だろうと、数キロ先の隣町と感覚的に変わらない時代となり、旅行代理店の役割は終わりつつあるのではないかと思える。そして机上を占拠していたパソコンは安くなり、小さくなって、机の脇に隠れて見えなくなってしまった。

巷で評判のグーグルマップの新サービスを使ってみた。最初は自宅と実家の周囲を散歩して、次に学生時代の懐かしい土地の歩き回った。はじめての下宿を探し回り、昔懐かしい建物を発見して喜び、母屋の玄関でお世話になった大家さんに会って、ちょっと胸にこみ上げてくるものがあった。それから、社会に出てからの時間を辿り、その変化に驚き、また昔の名残に慰められ、はっと気がつくと明け方になっていた。蒸し暑い2008年の夏の夜、わたしは一歩も外に出ることなく、いままで想像すらしなかった旅行をした。そして、いずれの日にか、人は擬似的であるにしろ、タイムトラベルさえ体験できるようになるだろうし、いまはその入り口に立っているのだと感じた。

2 件のコメント:

  1. 匿名9.8.08

    お久しぶりです。
    ストリートビューにはびっくりしました。既に終了した大規模修繕中の我が家(マンション)が、しっかりとたくさんの工事車両とともに写っていました。
    早速、自分はいろいろな馴染みの場所を訪れましたが、会社の女性は自宅が出ていたことに物凄い嫌悪感を示していました。
    上からはまだいいけど、横からはリアル過ぎるような…。使い方次第なのでしょうけれど。

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  2. 匿名10.8.08

    leftyさん、どうもです。
    いや、ひさびさにインパクトのある経験をしました。見覚えのある人が写っていて、本当にびっくりです。たしかに、プライバシーに敏感な人は嫌でしょう。隠し撮りみたいになってしまうので、事前に何らかのアナウンスがあっても良かったと思いますね。わたしなぞは、颯爽と歩く姿でも撮影してもらって、世界中の皆さんに見ていただきたいくらいです(笑。

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