2008年9月14日日曜日

夜の美術館

夜になり、きれいな月が出てきたので、おんぼろバイクでナイトツーリング。行く先は、渋谷の美術館。週末は夜9時まで開館していて、その時間帯はじっくりと鑑賞したい人だけの、理想的なコンディションだろうと読んだのだ。そして、その読みは的中し、昼間の美術館とは違い、小人数だけの緊張感の漂うギャラリーで、思う存分絵を楽しむことができた。

今回のお目当ては、やはり「オフィーリア」。密かに「河童の川流れ」と命名しているが、「それは気持ちのよい様子を言ったものではありません」というのは百も承知の上である。魂を引き裂く苦しみから今まさに解放されようとする、若い女性の最期の姿。ある意味グロテスクな題材だけど、光を失い虚空を見つめる両目とあまりに美しい川の流れの対比に、その絵を観る者を虜にする魅力がある。じっと見つめていると、絵の中から深いため息と、呟きのような音が聞こえる。

閉館時間いっぱいまで粘って、小腹が空いたので店を探しに周囲を歩くが、あたりは表現に困るほどの猥雑さだ。美術館ができた当初、まだ大人のナイトスポットという風情も残っていたけど、これでは作品の余韻を楽しみつつちょっと食事でもして行こうという気にならない。たくさんあった書店もあらかた姿を消し、危険な雰囲気だけが残った渋谷には、もう用がなくなってしまっている。

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