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歩道のハナミズキが紅葉して、枝の先に赤い実をつけていた。夜に近所の公園を散歩していて、毬栗を踏みつけた。夏嫌いには、ようやく待ちに待った楽しい季節の到来である。

例年この時期になると、決まって酒の肴代わりに映画「恋人たちの予感」見ている。物語としてはどうってことないけど、ニューヨークの季節の描写が素晴らしくて、それでお気に入りの映画になっている。特に、メトロポリタン美術館 を舞台とした場面で、館内からガラス越しに見えるセントラルパークの景色がたとえようもなく贅沢で心地いい。それから大晦日のラストシーン。シナトラが「君でなくっちゃ駄目だったんだ」と切々と歌う中、主人公が夜の町を駆け抜け恋人のいる場所に急ぐ場面にホロリとさせられる。

さらにこの季節、やっぱり外せないのが「月の輝く夜に」という映画。ニューヨークの秋はオペラの季節ということで、映画のクライマックスとなる舞台もメトロポリタン歌劇場である。しかしブラックタイでオペラ鑑賞も悪くはないが、それよりも下町のレストランで教え子に振られてしょげる教師と孤独な主婦が会話する場面が、いかにも都会的で気に入っている。甘ったれの中年男の誘いをぴしゃりと撥ねつける女の凛々しさが爽快。また老人がたくさんの飼い犬を引き連れ、ハドソン川の桟橋から満月に向かって吠えるエピソードも忘れられない。

さて、そういうことを書いていて、どうしても挙げたくなるのがウディ・アレンの映画作品のいくつか。一番人気「アニー・ホール」の軽妙で洒落たシナリオを楽しむのもよし、自分の一押し「マンハッタン」の愛情溢れるニューヨークの街角描写に浸るのもよし。とりわけ印象的なのが、ガーシュインだったかの曲をバックに深夜のブルックリン橋?の袂でデートする場面。黒々としたブルックリン橋のシルエットが、画面一杯にゆっくりと立ち上がるさまは、公開時に一度だけ見たきりなのに、その圧倒的な迫力が脳裏に焼き付いている。

友人たちの間ではアメリカ嫌いの偏屈で通っているが、実は映画を通じてみる一昔前のニューヨークは、わたしにとっては夢のような街なのである。もちろん映画の世界と現実は全然異なっているというのは承知の上。だけども一生に一度くらいは、直にニューヨークの街の匂いを楽しんでみたいと思う。そして、訪れるならやっぱり季節は晩秋がいい。何時のことになるかはわからないが、それまでには元気を取り戻してほしいと願っている。

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