2008年11月21日金曜日

病院

地方に住む近親者が検診に引っ掛かり、すぐに治療が必要と診断された。しかし地域の医療水準に不安があったので、こちらで評判のいい病院のセカンドオピニオンを求めた。夜9時に面談があり、疲れているはずの担当医はそのような素振りを少しも見せず、患者家族の疑問が解消されるまで粘り強く病状を説明をしてくれた。病巣は小さかったが、それでも全摘手術が必要との結論。医師の真摯な姿勢に感銘を受けた私たちは、その場で手術を受けることを決断した。

噂には聞いていたが、患者中心の医療と看護を理念に掲げる、その病院の水準には驚くことばかりだった。平均の2倍以上に上るスタッフが緊密に連絡を取り合い、患者が安心して治療に専心できるよう工夫されていた。事務や警備の人に至るまで非常に親切で、巨大な施設の只中で、茫然と立ちすくむという経験を味わうこともない。そして病室はすべて個室で、ホテル並みの設備が備えられ、しかも24時間面会が可能であり、望めば患者にずっと付添うこともできた。自分自身や家族の入院経験と比べると、その快適性はまったく雲泥の差と言ってよかった。

どうしてそのような高水準の医療サービスを提供できるのか。徹底した経営努力が実を結んでいることもあろうし、経営トップの卓越したリーダーシップも無視できない。大勢のボランティアの参加も貢献しているだろう。しかし行き着くところは現場の士気の高さであるはずだ。それをどのように維持しているのか、他の医療機関とどこが違うのか、経営の観点からも実に興味深い病院だった。

半月近い入院期間を終え、入院時とは別人のように明るくなった彼女の、「もう少し長く居たかった」という言葉を聞いて、最善を尽くして本当によかったと思う。そして彼女の場合、あらゆる面で運が味方したと感じる。「みなさん、さようなら」というカナダ映画で、病院の天井は壊れ、廊下にまで病床が所狭しと並んでいる場面が映っていた。福祉先進国と言っても、どこの国も医療の現場は理想とはほど遠いと聞く。他方、世界のお金持ちは、最高の医療を求めて、気軽に外国の有名病院に行くとも聞いた。そんなことから井上ひさしの「吉里吉里人」のストーリーなどを思い出したのである。

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