2008年11月28日金曜日

ブラウン



ブラウン製品との最初の出会いは、おそらく父の電気シェーバーだったと思う。ずっしりとした重量感と、機能の塊のような武骨さを感じた。次の出会いは、学生の時、知り合いが使っていたサイコロ状のポップなライター。黄色と黒の明快なツートーンが気に入って見せてもらうと、それもブラウンの製品だった。

はじめて購入したブラウンは、臼式のコーヒーグラインダー。本体は卵の黄身のような温かな色に包まれ、他とは比較にならない抜群の切れ味を持っていた。それまで手回しのコーヒーミルに頼っていたので、数秒でコーヒーパウダーができるのに目を見張ったものだ。それからほとんど同時期に、コンパクトな目覚まし時計を購入した。清潔感あふれる白のボディと、視認性のいい文字盤、チクタク音が聞こえないメカに感動した。それらの製品の多くが、ディーター・ラムスというデザイナーの作品だったことを知ったのは、そのずっと後のことである。

ブラウンの電気シェーバーを使い始めたのは、90年代初頭のこと。銀と明るい灰色の組み合わせに目がくらみ、湧き上がる物欲にあえなく屈したのだ。それから10年近くたった頃、補修部品のストックが無くなり、修理品の代わりに新品のシェーバーが送られてきた。それがブラウンとの付き合いの最後だった。時代の変化か、買収された影響なのか、それ以降いいと思える製品が無くなって、ブラウンという会社はわたしの中から消えてしまった。

今わが家で機能しているブラウンは、2代目の目覚まし時計だけである。修理できなくなったものは、保存せずに捨ててしまった。時々後悔することもあり、そういうときはインターネットで当時の製品を眺めて、以前の製品を懐かしんでいる。今なら大阪の展覧会で現物を見られるが、道具である以上やはり実際に手にとって、使う楽しみを体感しなくてはつまらないと思う。とはいえ、こちらに巡回することがあるならぜひ行ってみたいものだ。

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