3等賞

ツマタビ、ツカノマジユウ。仕事帰りは、イヴの夜の雑踏でも楽しもうか。まずはメガネ屋に行ってメガネの洗浄をしてもらう。仕上がるまでの20分間、疲れが溜まっているのか、眠気に負けてスツールに座ったままウトウトとする。真っさらになったメガネをコートの内ポケットに仕舞い、さて次はどうしよう。

すでに腹が空いていたので、何はともあれ腹ごしらえ。ターミナル駅前の地下街にある飲食店で、焼きソーセージとフライドポテト、そして生ビールを注文する。紫煙の籠る混雑した店内で、狭いカウンターに体を預けて一人の食事を楽しむ。真っ白なクロスが掛るテーブルでシャンペンを飲むよりも、肩を触れ合いながらビールを飲む贅沢。この大都会の魅力は、いつでも孤独になれること、そしてその孤独を楽しむ場所に事欠かないことである。

食事が終わって、次に向かうのは書店。年末年始の暇な時間のための本を探すのだ。外の喧騒と対照的に静かな店内は、イブの夜だというのに、つまらない専門書を開いて読んでいる若者が多い。勤勉さにケチをつけるつもりはさらさらないが、人生良く遊びよく学べ、じゃなかったかい。思案の挙句に何冊か新刊本を買い求めて、時計を見るとまだ8時半。店を出てからビルの谷間を、夜風に当たりながら、あてもなくブラブラする。映画を観るには、時すでに遅し。

賑やかな街を横切り、人気の疎らな路地裏を通り抜け、ネオンの灯が遠くなったところに行きつけのバーがある。今夜の終着点は、やはりここか。何を注文するわけでもないのに、勝手に出てくる酒を飲み、マスターいつもと同じ雑談をする。そうこうしている間に日付が変わり、2頭立ての馬車がカボチャに戻る時間がやってきた。今日はここまで、ここを過ぎず。

その夜の収穫は、景品でもらったベルギー製のガラスコップ。最初に入った飲食店で引いたくじの3等賞。1等でもなく2等でもなく、かといって外れでもない、平凡な当たりくじに妙に納得する。素朴で、しかもずっしりとした質感があり、ペン立てにちょうどいいかもしれない。

コメント

  1. こんばんは。
    最初の店とはひょっとして・・・新宿のあそこでしょうか?
    私も店を覗いたのですが、立ち飲みもできそうにない混雑だったので諦めました。
    イブの夜、もしかすると街のどこかでatoさんとすれ違っていたかもしれませんね。(想像違いだったらごめんなさい。)

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  2. こんばんは、umeさん。
    はい、ご名答!ベルクです。
    なんだ、声をかけてくれたら、もう一人分のスペースくらい、喜んで作って差し上げたのに。
    なんたって、一人より、素敵な人と飲む方が楽しいに決まっているのですから。

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