クリスマスソング



クリスマスが近い。わたしたちは同い年なので、つい昔話で盛り上がる。そして毎年のようにこの時期は、アイスクリームケーキのことを思い出しては笑っている。ともに小学生の時の記憶である。

テレビは盛んにクリスマス気分を演出し、大手の菓子メーカーはクリスマス用のアイスクリームケーキの宣伝をしていた。たぶん自分たちからねだって買ってもらったのだろう。わたしはイブの夕方にお遣いに出て、予約していたアイスクリームケーキを取りに行き、発泡スチロールのケースを両手に抱えて、ワクワクしながら帰ってきた。賑やかな食事が終わり、最後に楽しみにしていたアイスクリームケーキの登場である。家族みんなでそれを取り囲み、各自が食べたい部分を主張して、それでまた一段と座が賑やかになる。ところがようやく配分が決まり、包丁を入れる段になってから、コチコチに固まったそれはいっさい刃を受け付けないことが分かった。少し溶けるまで待ってみたが、柔らかくなったのは表面だけで、中はシベリアの永久凍土のように凍ったままである。最後には父が短気を起こし、包丁を火で炙り、熱くなった刃で何度も切れ目を作り、それでようやく切り分けることができた。皿に乗ったアイスクリームケーキは、長時間の格闘で形が崩れ、口に含むと包丁の鉄の味がしたものだ。それが理由ではないのだが、それ以降クリスマスイブに華やかな食卓を囲むことはなくなった。

似たような記憶を持つ者同士が、普段となんら変わらない食事をしながら、お互いの家族の絵に描いたような幸せな子ども時代を語っては笑い合っている。そして、それがクリスマスとは縁のないわたしたちにとって、一番のクリスマス・プレゼントなのだ。だから何にもなくても、この季節は好きである。

ずっと以前に、雪の降りしきる空港に到着した時のこと、ゲートが開くまでの短い間に、機内では風変わりなクリスマスソングが流れていた。どこかエキゾチックで、奇妙に心に残るメロディ。時々思い出しては歌おうとするが、意外に難しくてうまくいかなかった。Youtubeでそれを見ることができて、胸のつっかえが下りた。

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