「人は意外に合理的」

人間はできるだけ楽に生きていくために、将来の状況を予想し、コストとベネフィットを考量して行動している。たとえば、急ぎの用があるとき、特別の理由もなく回り道する人は少ないはずだ。もしもそういう人がいたなら、きっとそこには強固で合理的な理由があるだろう。

去年前半のガソリンの異常な高騰場面でも、わたしは運転を控えることを一切しなかった。ガソリンが高騰すると遠距離から車で首都圏にやってくる人はいなくなるだろうし、地域のドライバーも不安に駆られて運転を控えるだろうと予想した。これに対して我が家では普段からそれほど運転する訳でないから、ガソリン代が少々高くなっても家計に与えるインパクトは小さい。むしろ道路が空くことによって、目的地まで迅速に移動できるメリットの方が遥かに好ましい。その予想は見事にあたり、普段なら渋滞で混雑する道をノンストップで通り抜けられるようになり、しばらくのあいだ気分のいい思いをさせてもらった。

以上は単純で卑近な例だが、表面的に理屈に合わない行動も、実際には十分にそろばん勘定が合っている。しかしこれが集団行動となると、説明のしづらい例が増えてくる。ティム ・ハーフォードの「人は意外に合理的」は、現代経済学の知見をベースに、現実に存在する社会現象をそろばん勘定の観点から説明する。社会問題を善悪で考えると、最後には超えられない壁に突き当たる。しかし、そろばん勘定ならば誰もが理解可能であり、そこに問題解決の糸口がある。まさに本書の価値はそこにあると思うのだ。

わたしにとって参考になったのは、人種差別が好き嫌いではなく、人々の合理的な判断で発生することから、その解決をいっそう困難にしているという点。日本で学歴差別がなくならないこと、はたまた政治の世襲が進行すること、そういうことも同様の原因に根ざしていると考えるならば、その問題の解決はある程度強権的な手法に頼らざるを得ないのかもしれない。ただそうなると、80年前に起きた悪夢が再現されることだってあるし・・・。まったく人間の集団とは、厄介なものである!

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