2009年5月11日月曜日

コーヒー考 その2

最近になって、慣れ親しんだコーヒー粉が手に入らなくなり、コーヒーの味が微妙に不安定になってしまった。そこで対応策を考えるにあたって、最新のコーヒーの手引書『コーヒー「こつ」の科学』を読んでみた。これが、非常にバランスの優れた、これまでの自分自身の実感にも合う、素晴らしい内容の本だった。

なんといっても「ペーパードリップはポピュラーな割に、意外に複雑で難しく、慣れが必要だ」と述べている点に深く同意する。そして、その根本原因として、湯を注ぐと同時に成分抽出が行われるため、抽出時間がコントロールできない点を指摘する。更に、粉の大きさや分量、ドリッパーの形状によっても抽出時間が変動することから、なぜそうなるかを丁寧に解説している。そして結論的には、私と同じ方法、つまり粗挽き豆を分量を多めにして短時間で抽出することを勧める。

指摘されている問題点は漠然と自覚していたが、ペーパードリップが本質的に抽出時間を決められない方法だという認識がなかったため、いわば場当たり的に問題を解決していた。結局、「ペーパードリップは、誰にでもおいしいコーヒーを淹れることができる最適の方法だ」という先入観に縛られていて、不満があっても他の方法を試してみることまで思いつかなかったわけだ。この本は、コーヒーの基礎理論から、どのように考えたら自分に合ったコーヒーが淹れられるかという道筋をつけてくれる点で、妙なこだわりのない柔軟で素直な手引書だと思うのである。

そこで、すべてを白紙の状態に戻して、コーヒーの淹れ方を再検討した。要は、自分の意図したとおりに、成分の抽出をコントロールできるかということに尽きるので、ブレの出る不安定な方法は避けなくてはならない。とすれば、湯を逐次投入する方法、すなわちドリップ方式はひとまず諦めて、湯とコーヒーの粉を同時に混ぜて抽出する方法を検討すべきだ。その中では、サイフォンは沸騰水なので豆を選ぶし、しかも温度管理が難しい。すると、残るはフレンチプレスということになる。この方法、実は以前からひとり分だけ淹れるときにやっていた。少ない分量なら、ペーパードリップよりずっとうまく出来るからである。しかし、これは後片付けが面倒だし、少人数分しか作れないので、実用面から却下である。

結局、最後に残ったのは、湯の入った鍋に粉を放り込んで、時間を計って抽出するという単純な方法だった。これなら誰でも、いつでも、同じ条件下での安定した抽出が可能だ。手順は、鍋で湯を沸騰させて、これを一度ビーカーに戻して適温にする。そして鍋に湯と粉を投入して攪拌し、鍋に蓋をして待つこと約4分。鍋の中では安物の粉でも美しい褐色の細かい泡ができ、コーヒーらしい濃厚な香りを放っている。あとは、先ほどのビーカーに、コーヒーの上澄みを濾して注ぐだけである。鍋とビーカーさえあれば、誰でも上手にコーヒーが淹れられるし、特別な器具や慣れも不要で、片付けも簡単、今のところ我が家にはベストな方法だと思っている。最大の課題は、より安くて、ほどほどにうまいコーヒー粉を見つけだすことである。

2 件のコメント:

  1. lefty17.5.09

    今度、この本を読んでみます。ぺーパードリップは、確かに安定しません。しかも、杯数が変わると、よりわからなくなります。
    atoさんの淹れ方は初めて聞きました。
    このようにコーヒーは奥深いからおもしろいのでは思っています。
    アイスの豆を買った途端に、気温が下がり、がっかりです。

    返信削除
  2. leftyさん、こんにちは。
    うちの方法、検索してみると確かに誰もやってないみたい。
    でもコーヒーの評判は上々なんですよ。
    毎回、抽出時間を変えて淹れてますが、10秒程度の違いで見事に味が変化します。
    ストレートで味わうときは短く、そうでないときは長めに時間をとります。
    基本的にマメな性分なので、何をやっても少々マニアックになりますね(笑。

    返信削除