残したカメラ

姪が本格的に写真を撮り始めたので、長らく保管していたフィルムカメラを出して、自由に気に入ったものを選ばせた。そうしたら、何の迷いもなく、ニコンの手動式のカメラと35ミリと105ミリのレンズを手にした。理由を聞くと、授業で使うカメラと同じだし、スタイルがさっぱりとして格好いいという。ああそうか、君の生まれる前に、ボクもそう思ってこのカメラを買ったのだっけ。金属の塊みたいで古めかしいけど、不必要なものが何一つない潔さが魅力だね。オートフォーカスのは要らないのと尋ねると、マニュアル読まないと使えないようなモノは失格なんだそうだ。一昔前の最新鋭カメラは妙にくたびれて加齢臭さえ感じるが、それに比べてクラシックニコンはシルバーに輝く万年青年。ごく自然の、当たり前の選択だった。

姪には秘密にしているが、その時出さなかったカメラが2台あった。それはオリンパスの古いコンパクトカメラ。5年前にデジタルカメラに切り替えるまで、一番出番の多いカメラだった。旅行に行くときは、重たい一眼レフではなく、この小さな28ミリと35ミリの単焦点カメラを2台を、それぞれ必ず持って出かけたものだ。チープだけど写りは悪くないし、一眼レフと違って周囲の人が警戒しないのが取り柄だった。それに、カメラ特有の大げささがないというか、所有欲の対象とはなりえないようなカジュアルさが気に入っていた。だから所有欲を拒絶する風のある姪の目に触れると、きっと取り上げられるだろうと思ったのである。

カメラと一緒に、とっくに期限切れになったアグファとコニカのフィルムも数本出てきた。そして思い出に残したカメラをポケットに入れて、ちょっと遠くの町まで散歩に行ってみようかという気になった。

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