ちいさな厨房

インテリア雑誌などで、広々と明るく清潔な厨房の写真をよく見るが、見た目ほど素晴らしいとは思えない。もちろん厨房機器や食器棚などが整然と、余裕たっぷりに並んでいれば、どれほどか気分はいいだろう。しかしスペースが広いと無駄な動きが多くなるし、だいいちそれで美味いものが作れるわけでもない。むしろ、ほとんど動かずに、手の届く範囲に必要なものがすべてあるほうが、厨房としては出来がいいとすら思う。

調理したり食事したりすることは、人の根源的な欲望を満たす行為であって、とてもプライベートな性格を帯びる。開けっぴろげにするよりも、密やかな感じのほうが似合っているのだ。だから、レストランでもテーブル同士がくっついてお隣りと友達になるくらい狭いところが好ましいし、客が厨房を覗き込みながら注文できるくらいコンパクトな店のほうが、それだけ贅沢な時間を楽しめるように感じる。最初は小さなレストランだったのが、成功して店を広げたとたんに詰まらなくなるのは、たぶんその辺の事情が影響していると思う。シェフが一つ一つテーブルを回って挨拶をし、客との親密さを演出するという習慣や日本の茶室が非常に狭いのも、おそらく同じ理屈だ。

最近すごく楽しいと思ったのが、こちらの映像。とあるアパートの小さな厨房で、それに負けないくらい小柄な人が、楽しげに調理をし、空いた時間で酒を飲んだり、電話したりする様子が見れる。見ているこちらまで幸せになって、さて、何か調理してみようかという気になってくるから不思議。

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