お下がりカメラ


お下がりというと、世間ではネガティブな印象しかないらしい。子供の頃から、何でも父のお下がりばかり与えられていたせいか、モノなんて使えればそれでいいという感覚が身についている。もっとも、さすがに悪趣味なのはご免だが、没個性の無味無臭のお下がりはむしろ大歓迎である。

どうしてかというと、没個性だからこそ誰が持ってもおかしくないし、思い入れが生じないぶん気持ちの負担もない。そのうえお下がりなので、すでに十分に古く、従ってそれ以上古くなりようがないから新しいモノに関心を向ける必要がない。さらに商品としての中古品と違い、お下がりは、モノを通じて親しい人たちと気持ちが繋がる感じが楽しい。だから、目利きの姪たちにも、これがほしいと言われれば、ホイホイとお下がりに出している。

そして最近、また父からお下がりをもらった。物置を整理してたら、いろんながらくたと一緒に出てきたという。いつ買ったのか忘れたが、動くかもしれないので使ってくれと言われて、送ってもらったカメラ。入っていた電池をみると、有効期限の1987年の刻印が入っていた。ほとんど4半世紀使われていなかったらしく、シャッターを切ろうとしてもびくともしない。メカニカルな故障ならばと、内部を開いてギヤに注油をすると、運良くカメラの機嫌が直った。

30年ほど昔の、本当に初期のオートフォーカスのカメラだ。シャッターを切ると、カメラの中の小さな妖精たちが、ばたばたと走り回って仕事をしているような音を立てる。今となっては不器用さだけが取り柄。もちろんデジタルでないのでフィルムも要る。いつかは必要になるかもと思い、大切に保管していたコニカのフィルムを入れて、どこか気に入った場所でも撮影してみようかと考えているところである。

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