2009年12月10日木曜日

初冬の旅 3


前回と同じく、今回も再び路線バスを楽しむ旅行となった。鉄道の場合だと、時刻表などは事前に調べがつくし、どこを走るかも直ぐに分かる。これが路線バスになると、運行状況すら皆目見当がつかない。とりあえず行ってみてのお楽しみ、もしも駄目ならタクシーがあるさ、といういい加減さで臨んだ。

少し考えれば分かるが、路線バスは自分が普段乗るもの以外、たとえ近所でもあまり知らないものだ。まして地方では主たる交通手段は自家用車なので、バスが走っていることにすら無関心だったりする。だから通りすがりの人に停留所を尋ねる程度のことでも、はっきりした答えが返ってこない。停留所が分からない、いつ来るか分からない、どこを通るか分からないでは、まるでサイコロを振って旅行している気分である。


それでも路線バスの旅行が止められないのは、やっぱりそれが楽しいからに尽きる。静かな商業地だの寂しい住宅街だの、バスは我々が普段目にすることのない生活地域を走り抜け、そして、その間に様々な人たちが乗り降りする。ドアが開いて、いきなり潮の匂いが流れ込み、浜辺の町にきたことを知ることがあった。登下校の子供たちに取り囲まれ、楽しいおしゃべりを聞きながらの小旅行もあった。

タクシーや列車に乗れば、あっという間だけど、せっかく無為の時間を過ごすための休暇である。ぼんやりと停留所でバスを待つ時間も悪くないし、名前さえ知らない街に住む人たちの日常をバスの車窓越しに拝見するのも楽しい。そして、見当違いの場所で降車してしまい、途方に暮れるという経験も、後で振り返ると結構愉快なものである。

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