2010年12月30日木曜日

自然体で

食生活と病気の因果関係を調べていたら、怪しげな言説が世の中を徘徊しているのに気がついた。肉食が疾病の原因であるとか、逆にコメ食ってれば大丈夫とか。人が普通に食べているものを取り上げて、よくもそう安易な結論に飛びつけるものだ。そもそも「健康」という人間の根源的な欲望と、「食」というもう一方の欲望が結びついている時点で、これらの言説に対しては疑いの目を向けるのが穏当だろう。人は利害のないことでは嘘は言わないものだ。

たとえば、アメリカの「なんとかリポート」には、70年代の中国における食生活調査にもとづき、アメリカ人より多くカロリーを摂取しているにもかかわらず中国人の方が健康でスマートであって、アメリカ人の疾病はその典型的な食生活に原因がある、とか書いているらしい。いやはや、どこから突っ込んで良いのやら。それを論拠に、もう一つ飛躍して、だから和食が一番というのもどうだろうか。ちなみに、「なんとかリポート」が胡散臭くて調べた人がいるが、ああやっぱりという結論だった。

米さえ食べてりゃ元気で長生き、というのも同じだ。「風土はフード」だっていうが、今こそ米は十分あるが、むかしの日本人はどれだけ米を摂取していたのだろう。その理屈だと、毎日ドングリやクルミを食べてれば万事オーケーにならない?もう一つ言えば、さきの「なんとかリポート」に喧嘩を売っているような気もする。もちろん、コメは嫌というほど税金をつぎ込んだ食料だから、納税者は食べた方がお得かも知れないし、利権団体だって嬉しいだろうが。

嫌なのは、健康という人の弱みにつけ込んで、テキトーなこと書いて平気な人たちが見受けられるということ。猥褻な書籍ならば時に処罰されるが、食や病気なら何書いても大丈夫なわけで、意地悪く言えばそれは美味しい商売だ。それぞれには善意で書いているのかも知れないが、だから病気にならないとか書かれると、ちょっとね、と思う。それが癌にならない、癌が治る食事だのというと、深刻な影響だって生じるだろう。仮に医学上の発表とした場合、その内容は審査に耐えられるものなのだろうか。

同い年の知り合いが、最近癌で亡くなり、しかも以前から健康のため食事に特別な配慮をしていた人なので、余計にそのような思いを深くする。いっそそういう運命だったなら、美味しいものを好きなだけ食べていれば、もっと幸せだったのじゃないかと。自分の場合は、若い頃から野菜中心の食事だが、だからといって癌にならないとは信じていないし、自分とは違う食事をする人が癌になりやすいとも思わない。素人意見に過ぎないけど、原因の大半は老化と遺伝だと思っている。そしてその方が、仮に事実がそうでないにせよ、いざ本番となったときに素直に病気と向き合えると感じる。食事に関しては、自らの心の赴くまま、自然体でありたい。

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