2011年10月12日水曜日

トンネルの中で

「スクリューフレーション」という耳慣れない言葉を知った。これはアメリカにおいて中産階級の貧困化とインフレが同時進行する事態を指す新しい言葉らしい。今日、アメリカでは中間層の人たちが職を失い、新たに職探しをしても、これまでの生活水準に見合った仕事が見つからないという状況が常態化している。どこか景気のいい場所に引っ越そうにも、住宅ローンのせいで動くに動けないという話も聞いた。そういう中で、食品やガソリン等の生活必需品の価格が上昇するのだから、可処分所得が減少する中間層は非常に厳しい生活を強いられるわけだ。

ロバート・B・ライシュの「余震」という本を読んだ。その中でも、アメリカでは中間層が少なくなり、ごく少数の桁外れの富裕層と大部分の貧困層に、社会が分化しつつあるという指摘があった。努力しても報われない、前より豊かにはなれない、と感じる人々が増えてきて、どうして健全な社会を維持できるだろうか。本書によると上位1%の人がアメリカの全所得の約4分の1を得ているという。そして、そのような富裕層は、他の人たちより税制上ずっと有利な扱いがなされているらしい。つまり自由と平等のアメリカは、競争に勝った人がすべてを受け取る不公平な国になってしまっているということだ。それにしても、世界経済を牽引するアメリカの、一番の消費の担い手である中間層が萎縮する時代に、いったいこの世界の誰が彼らに代わって景気を支えてくれるのだろうか。そう考えると、出口の見えないトンネルを、この先何年辛抱強く歩き続けなくてはならないのかと、溜息のひとつも吐きたくなる心境になるのだ。

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