チャーハン雑感



伊丹十三の映画では、断然「タンポポ」が気に入ってます。映画の本筋よりも、むしろ短い挿話がいい。特に「母ちゃん」の最後のチャーハンなんて、心に染み渡るエピソードです。貧乏所帯だけど、「母ちゃん」は料理がとても上手で、手入れのされた広東鍋を使って、炎を立てながらチャーハンを炒めるわけです。このあたりの細かい表現は、伊丹監督の厳しい演技指導が入っているのでしょう。直後に「母ちゃん」が死んで、子供を励ましながら親子で最後のチャーハンを食べるシーンで、私はいつ観てもグッときます。



お次はガス会社の「お父さんのチャーハン」、きっと先の「母ちゃんのチャーハン」が脳裏にあったはずです。こちらは玉子かけご飯を炒めただけのような、ソースが隠し味になっていないチャーハン。鍋は北京鍋。娘の結婚の支度でバタバタしてたのでしょう、晩ご飯に店屋物を注文しようと電話の前に立つ父親に、娘が父親の唯一の得意料理であるチャーハンをねだります。不器用な父親をきたろうさんが、抑え気味に上手く演じてます。ただ甘やかされた娘が、すぐに戻ってくるような気になって仕方がないのは、自分だけでしょうか。

チャーハンは、自分で言うのも何ですが、わりと得意料理。ある時期、料理本を傍らに集中的に作り続けたことがあったからです。たまに思いついたように作るから、いつまでたっても要領が飲み込めないだけで、連続して作ると誰だっていやでも上手になるものです。何度か妹たちに作ったこともあって、お兄ちゃんのは美味しいんだよねと、今でも時折話題にされます。チャーハンの良さは、特別な食材が無くても、兎に角なんとかなるという融通無碍さじゃないでしょうか。手持ちの材料に合わせて、ケチャップを使ってオムライス風、ナンプラーでナシゴレン風、玉子だけなら、先の「お父さんのチャーハン」風ピラフ。そういえば「お父さんのチャーハン」はパラパラでなくパサパサと評されてましたが、あれはむしろしっとりと仕上げた方が美味しいでしょうね。

どうしてチャーハンのことばかり書き連ねているかというと、買い物を無精しているうちに冷蔵庫がネギと冷や飯だけ残してすっからかんになってしまったからです。どうせひとりだから、酒とつまみで寝てしまうという離れ業もありますが、お盆でもありますし、真面目にチャーハンを作って父の写真にお線香と一緒にお供えがてら並べようかと思います。

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