2014年4月6日日曜日

「恋に落ちて」


昨年の秋、テレビを買い替えました。
デジタル放送に対応した32インチの標準的なものですが、それまではコンパクトなアナログテレビだったので少々不便していたのです。
今どき32インチ程度では冗談のように思えるでしょうが、長らく小さな画面に慣れた目にとっては、それはまさに革命的な出来事でした。
私はもっぱら映画を録画したものを楽しんでいるのですが、画面が一気に拡大し、解像度が格段に上がったお陰で、映画の隅々まで子細に観察できるようになったのです。
つまり、映画から受け取る情報量が飛躍的に増大したということ。

それまで何気なく見過ごしていた、登場人物の細かな表情の変化や映画の小道具のこだわりを、録画機を止めたりスロー再生することで、いろいろと再発見することができるようになりました。
マクロの目でしか見ていなかった映画が、ミクロの目で、、、ちょっと大袈裟ですが、主観的にはそれくらいの違いで古い映画を見直してます。


ロバート・デ・ニーロ主演の「恋に落ちて」という不倫恋愛映画を、久しぶりに見ました。
デ・ニーロの出演映画としては凡庸ですが、私はその普通さが嫌いではない。
現実離れした豪華絢爛なストーリーも良いけど、自分のしみったれた日常生活の延長にあるおとぎ話はそれなりの現実感が得られるからです。

子持ちの良き夫でありやり手の建築技師というのがデ・ニーロの役回りですが、映画の中で彼女との待ち合わせの時間を気にして腕時計を確認するというシーンがありました。
気になってその時計を静止画像で見てみたら、ガラスの表面に細かい傷がたくさん入った、普通の日本製のクオーツ時計でした。
まさに仕事と日々の生活に追われる労働者を象徴してます。
いいですよね、この演出の細やかさ。

もう一方のお相手、メリル・ストリープの時計は、はっきりとは言えないが、どうも母親の形見のように思える年代物の手巻きの時計。
映画の中では、暗示的に不幸な母親の存在が語られてました。
世間的には幸せそうに見えるが、実は孤独な女性だったのでしょう。

このように、アナログの小さなテレビでは決して得られない情報が、いろいろな角度から読み取れました。
その素人分析が当たっているかどうかは別として、少なくとも映画から得られる想像の幅は広がりますね。

最後に、映画館で見たときには確認のしようがなかったのですが、男女の出会いの場となった非常に美しい本屋が気になってました。
今回ビデオで改めて店名をチェックしてネットで調べてみると、実在の老舗書店だということが判明しました。
本屋マニアとしては、機会があれば是非訪ねてみたい場所なのであります。


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