「コーヒーをめぐる冒険」



「コーヒーをめぐる冒険」を観ました。

ベルリンに暮らす、ごく普通の青年の、アクシデントに満ちた一日を描いた映画です。
主人公は怠惰で気弱、しかし困っている人には親切にしたいと思っている青年。
彼は自らトラブルの種を播くタイプではないのに、ちょっとした手違いのような、些細なことから厄介ごとを引き寄せます。
学生でなく、かといって仕事もせず、もちろんお金はなく、ましてや何かを成し遂げたいという野望もない。
そういうないない尽くしで宙ぶらりんの青年には、小さなトラブルでもけっこう堪えますよね。
ただの映画とはいえ、出来の悪い学生だった自分を見ているようで、私にとっても少々辛かったです。

しかし決して嫌いな映画じゃありません。
たとえ不条理な事態に直面しようと、限りなく誠実でありたいというメッセージが伝わりました。
語りかけてくる人々の声に耳を傾け、共感し、自分の持ち合わせる精一杯の言葉で気持ちを伝えようとする青年の姿に、もう一度あのような年代を生きてみたいと思いました。

映画の後半、バーで語りかける老人の思い出話があるのですが、おそらくナチス時代に起きた「水晶の夜」の出来事なんでしょう。
その場面まで来て気がつきました。
映画の主人公は、青年とともに、ベルリンの街そのものだったのです。

そしてベルリンのモノクロームの風景から、さらにもうひとつの懐かしい映画、ヴェンダースの「ベルリン・天使の詩」を思い出しました。
壁のあった頃のベルリンと、壁のない自由なベルリン。
両方の映画で見事な対比になっていました。

「コーヒーをめぐる冒険」という邦題は、安直な捻りでなんだかなあと思いますが、映画そのものは良かった。
機会があればまた観たいと思わせる映画でした。

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