2014年8月17日日曜日

わたしも、ちょっと考えた

資本主義の終焉と歴史の危機

著者の本を読んだのは、これで2冊目。
従来からの主張を土台にして、一般向けにかみ砕いた内容でした。
資本主義は常に中心と辺境を必要としながら機能してきたが、その辺境も消失して、遂には終焉するに至るというお話。
資本主義のメカニズムを通して、近現代史を俯瞰するにぴったりの本です。


世界恐慌が起きる直前の、先進国における上層と下層の格差は想像を絶するほどに広がっていました。
ここから世界恐慌、第二次大戦を経て、荒れ果てた先進諸国に膨大な需要が発生し、長期の高度成長が持続することで、人類史上始めて豊かな中間層が出現することになります。
科学技術の進歩と商品経済の発展のもとで、誰もが楽観的に未来を信じることが出来た時代です。

しかし、それから間もなく石油ショックを引き金として、戦後の輝かしい資本主義が終わります。
「成長の限界」が意識され、新たな資本主義が必要とされます。
そして先進国の需要が減少し、製造業が後退する中で現れたのが、金融資本主義でした。
モノがだめならマネーで荒稼ぎをしようという発想です。
しかし、金融業は継続的な雇用を生まず、製造業は低賃金を求めて辺境に流れていった。
その結果、先進国の中間層は疲弊し、再び途方もない格差の時代に戻ってしまいました。

現在は、役割を終えつつある資本主義が、何とか延命しようと悪あがきを続けている段階だと言います。
アベノミクスも、その悪あがきの日本版に過ぎないので、仮に短期的に上手くいっても、必ずや他の弥縫策が求められるはずです。
率直なところ、アベノミクスとは自ら危機を回避しようとする人たちのために、時間稼ぎをもたらすための政策じゃないでしょうか。
少なくとも国民全員を救済しうる政策ではありません。
しかも、その賞味期限は終わりつつあるようにも見えます。

では、資本主義の次の時代、どのような社会体制を作るべきなのか。
著者は、成長を目指さない、安定した定常型社会を考えています。
しかし、それが経済を停滞させることなく、何とかやりくりしながらも、現在の社会水準を維持しようという意図ならば、いくら何でも不可能な気がします
なぜなら現在の社会制度が膨張する資本主義を前提とするのですから、この前提が外れる以上、現在の諸制度は大幅に修正せざるを得ないからです。

最悪、人口が半減することを前提とした社会をどう立て直すかという、いわば大戦直後の大混乱に匹敵するような状況での再構築です。
あまり暢気には構えていられないと思いますが、さてどうなのでしょうか。
個人的には、悲観も楽観もせず、想像しうる将来の暮らしに向けて、余裕のある今から着実に準備するしかないと思いますが。

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