2014年8月20日水曜日

ミステリ小説を仕分けする

冬と夏の年二回、休みを利用して部屋の片付けをします。
今回は、主に本の整理。
これまで本だけは甘い基準でストックしていたので、ちょっと目を離すといつの間にか狭い室内を占領しています。

本好きにとっては、また読み返すかもしれないと思うとなかなか本を捨てられないものです。
しかし自分のトシを考えると、娯楽系の本を読み返すことはほぼないし、仮に読みたくなったら図書館で借りればいいだけの話。
というわけで、先ずは高校生の頃から溜まりに溜まったミステリ小説を処分しました。


ミステリ小説に手を出したのは高一の頃からですが、最初はエラリー・クイーンとか、ディクスン・カーあたりから読みました。
今と違って誰の本が面白いのかさっぱり分からないので、手始めに取り敢えず古典という感じ。
もっぱら通学時や放課後に、たまに授業中にも隠れて読んだものです。
おそらく作品が懐かしいのじゃなく、読んでいた頃の自分が懐かしいだけなので、当時のは捨ててしまってもぜんぜん構わない。

ただ、その中で「マルティン・ベック」のシリーズは残しました。
初めて読んだ現代物のミステリーで、どれも忘れられないストーリーだったからです。
特に「笑う警官」の冒頭、犠牲者を乗せた無人のバスが、深夜の坂道を下っていくというシーン。
ストックホルムと言えば坂道、実際に坂道の多い町ですが、私の場合この小説で、紋切り型でないスウェーデンのイメージが植え付けられました。
それくらい印象的でありました。


最近知ったことですが、世界的に北欧ミステリーのブームだそうで、この影響で何十年かぶりにマルティン・ベックシリーズの新訳も出ています。
残念ながら、新訳の評判は悪いみたいですが・・・。

先日、タイミング良く、ブームの火付け役、「ミレニアム」の実写版をインターネットテレビで見ました。
内容的には決して悪くはありませんでしたが、如何せん私の好みではなかった。
ストーリーが、あまりに陰惨だったからです。
たとえフィクションでも、猟奇的なストーリーはもうゴメン。
現実にも、胸の悪くなるような事件が頻発してますから。
なのに昨今、小説といい、映画といい、こういうのが多くて困ってます。

ミステリに死体はつきものですが、死体のない作品もあります。
たとえばジョセフィン・テイ「時の娘」、もはや事件性すらない(笑。
私は小泉喜美子の端正な翻訳が好きなので、こういう小説は残したい。
そして同じ翻訳家つながりで、名作「女には向かない職業」とかライスの「大はずれ」に「大あたり」とかも。
大のお気に入り、ジェイムズ・クラムリーも捨てられない。
なにしろ小泉喜美子の作品には、ハズレがないからね。
小説を頭から読むのではなく、自分の気に入ったところだけを抜き出して読んでも楽しめます。

しかし、亡くなられてすでに30年になるのか。
お元気だった頃に、内藤陳さんとの暮らしを綴ったドキュメンタリー番組で見たことがありますが、非常に個性的な方だった印象があります。
不慮の事故で、若くして亡くなられたのがつくづく惜しまれる。
そして何より、毎年出版される大量のミステリ小説に埋もれ、世間から徐々に忘れられていくのが残念でなりません。



捨てる捨てるといいながら、やっぱり本は捨てがたい。
本を処分するなら、酒でも飲みながら、勢いでホイホイと振り分けていくのが一番です。

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