ベストバイ、ワーストバイ

私生活を知る人から、物欲がないとか、買い物嫌いだとか誤解されることが多い。しかし私の場合は、買い物をするとき、あらかじめ欲しい商品のイメージが比較的明瞭なのだ。デザイン、素材、サイズなどについての要求がはっきりしているため(好き嫌いが激しいという言い方も出来る)、いくら目の前に新商品を積まれても、その基準を満たさなければまったく関心が向かない。もし要求のものが市場に無ければ、それが出るまで何年でも待つか、もしくは自分で作ることを考える。だから、運良く欲しいものが見つかった場合は、大喜びで買い物をする。とっても嬉しいので、すり減ってなくなるまで使い続けたい。現実には、すり減ってなくなるものなどあまりないので、結局修理を重ねながら使い続けることになる。そういうのは、世間では物欲とは言わないのだろうか。

年末に書こうと思ったのだが、去年のベストバイ、ワーストバイを記しておきたい。まずは反省を込めてワーストから。WMFのコーヒーメーカーである。迂闊にもサイズを間違えたため、少人数では使い勝手が悪く、そのためほとんど利用しないでいる。プレス式の場合、容器のサイズはせいぜい3杯分くらいが適当だということが、使ってみて初めて分かった。更に悪いことに、早い段階でガラスにひびが入ってしまった。若干、ガラスが薄いと感じていたが、こんなにも早く駄目にしたのは予想外だった。同じ種類の商品では、かなり高価な買い物だっただけに、返す返すも残念である。何か良い使い道はないだろうか。

私にとってベストバイとは、なによりも生活に激震と言えるくらいの変化(ちょっと大袈裟すぎるけど)をもたらすモノであることが重要だ。単に新品であるとか、目先が少々綺麗になったというのではまったくもの足りない。使うたびに、あぁ、もしこれがなくなったら、明日からどうやって暮らしていけばいいのだろうというくらいの感動が欲しい。で、去年のベストバイだが、底浅のゴムバケツを真っ先に挙げたい。長年のラバーメイドの洗い桶が割れてしまい、テープを貼り付け騙し騙し使い続けていただけに、やっと代わりのものが見つかり本当に助かった。単に助かっただけではない。円形という形が洗い物には最適であるということ。しかも室内で足湯を楽しむにもちょうど良いサイズ。加えて大きな取っ手のおかげで、排水を掃除や植物の水やりに再利用することも簡単になった。もう以前のタイプの洗い桶を使うことを考えられないくらい利便性が優れていて、しかも安価ということで、ベストバイにしたい。

そして、もう一つのベストバイは、エミールアンリの耐熱皿。電気オーブンに2枚同時に入れられるというだけのことだが、今まで不便を耐えてきただけにそのインパクトは計り知れない。沸々と音を立てる焼きたてのグラタンを前に、一緒にイタダキマスと言う幸せは、何ものにも代え難い。それから、この耐熱皿の形状が、意外に何にでも使えるということが分かった。チャーハンのような御飯ものでも食べやすいし、サラダを盛ったり、もちろんパスタ料理にもちょうどいい。丈夫な耐熱の多用途皿として、ちょっとこれ以外のものは考えつかないのである。我が家の食生活に大きなインパクトを与えたモノとして、昨年のベストバイに。

モノの価値は、ある期間使い続けないと見えてこないものである。またデザインにしたって、ぱっと見が良くても、あとになって陳腐な印象に変わるものだって多い。だから、新しいものを短時間で評価するのは難しいと思う。グッドデザイン賞の審査は、一作品につき数分で行われるそうである。大量の応募作品から選り分けなくてはならないのだから、時間的な制約は仕方のないところだが、それにしても乱暴な話だ。昨年末に買ったのでまだ十分ではないが、モノとしてのスジはいいと思えるので、ベストバイ新人賞とでも名付けたいのが、写真の茶漉しである。一人分の茶を入れるに、わざわざポットを準備する手間が煩わしいので、どうしても茶漉しで済ませたくなるが、その旧来型のものが今ひとつ気に入らなかった。それでたまたま使えそうなものに出会えたので購入した次第。しっかりとした丈夫な素材に、直線的なデザインが似合っている。これに付属する乳白色の陶器の皿も実用的。長く使えそうだし、これから愛着の湧きそうな小物として挙げた。

ついでに調子に乗って、ロングラン賞を一つ。ちょうど前回の寅年に、貰ったお茶に付いてきたブリキの茶筒である。中身のお茶はさすがに申し分なかったが、それ以上に容器に感激したという希有な例である。あれから干支が一回りして、使い続けた茶筒にもずいぶんと貫禄が付いた。さすがに蓋の締まりが堅くなったり、表面が汚くなったりしてきたので、クレ556で軽く磨いたらまた元通りの滑らかな動きが戻ってきた。本当に質素で実用的なモノなのに、使えば使うほど美しくなり、まったく廃れず、愛着ばかりが増していく。いやまったく、日本の職人技は桁外れである。

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