2014年8月31日日曜日

防災の日を前に

今朝、テレビの防災番組を見ました。
先の大地震の際、日頃から真剣に津波対策をしていた地区で、却って多くの人たちが亡くなったそうです。
それは仮に私が当事者であっても、やはり同様の行動を取っただろうと思われるケースでした。

ありとあらゆる自然災害が起きる日本では、常識的に想定できる災害対策を打った以上、たとえ被害が発生しても結果責任を問われるべきではない。
しかし、注意を払えば容易に避けることの出来た被害については、厳しいかもしれないが、その責任の所在を問うべきだと思う。
そうでなければ、いつまで経っても同種の悲劇が繰り返されます。
ひいては、それが無用の社会的損失につながるわけですから。

地球の温暖化にともなう自然災害の多発化や、巨大地震の脅威を想定するなら、今後の行政の対応にも自ずから限界があります。
社会の有するリソースを、すべて災害対策に当てることは非現実的だからです。
だからこそ、国民一人一人に、被害を最小限にするための注意義務が必要とされるわけです。

公開されたハザードマップを念頭に、街を歩いています。
一旦災害が生じれば、とても助からないだろうと思われる地域でも、かなり無頓着な暮らしぶりが見て取れます。
そしてそういう所に限って、人の触れ合いが暖かな、住み心地の良い街を形成しています。
それだけに、この現状を何とかできないのだろうかと、もどかしい思いを強くします。


自然環境の大変動が危惧される現在、かつて先祖達が持っていた、そして私たちが忘れてしまった、賢く生き抜く知恵が再び必要とされているのかもしれません。

2014年8月30日土曜日

修理マニュアル



年初からクルマの買換えを検討していましたが、現時点では依然として気に入ったものが見つからず、もうすこし乗り続けることにしました。

その際に比較検討したクルマは、いずれも性能的には素晴らしいものの、あまりに今日風のデザインで到底自分の趣味とはいえない。
無秩序で狭苦しい日本の街では、クルマは所詮お邪魔虫なので、出来るだけ遠慮がちであるべきだというのが持論。
なのに昨今、ドライバーの虚栄心を満足させるためなのか、クルマは肥大化し、派手で威圧的なデザインが幅をきかせています。
そういうクルマたちが夕暮れの商店街を、時にはホーンを鳴らし、歩行者を押しのけながら走り抜けていきます。
あれは如何なものでしょうか?
そんなふうに考えているうちに、自分は無理せず、我が家の前世紀号に乗り続けるのが相応しいという結論に至ったわけです。


とは言うものの、同種のクルマを見かけることがなくなり、部品の供給も心許なくなっている。
加えて近ごろ、小さな不具合が頻発するようになりました。
なにしろマイナーな輸入車なので、ちょっとした修理でもけっこう掛かる。
自分で出来ることは、自分で解決しなければ、とても維持できるものではありません。

素人向けに書かれた修理マニュアルはないだろうかと探したら、一冊だけ見つかりました。
イギリスで出版されている、ヘインズ社の修理マニュアル。
日本語でさえ、その手のマニュアルはちんぷんかんぷんなのに、まして英語ではどうなることやら・・・。
しかし、届けられた現物を開いてみると、写真が豊富で、言葉もそれほど難しくない。
文学作品とは違い、目的はひとつですから、誤解を生じるような表現はあり得ないですものね。
そんなこと言われなくても常識だというレベルのことまで、アホにでも分かるように書かれてました。
まさに微に入り細に入りというやつです。
工具もガレージもない私に出来ることは限られてますが、それでもドライバやスパナで直せるところは、この本を参考に全部面倒見てみようと思います。


知り合いが、世間で言う「高級車」というのに乗っているのですが、ランプの球切れ程度の修理でも自分で出来ないそうです。
彼自身、そっち方面の技能はセミプロ級なのですが、それでも全然手が出せないと言います。
球切れ程度のことすら、オーナーが対処できないクルマなんて、実に不親切な話です。
ディーラーにとっては、美味しい話かもしれませんがね。

ウチのは「高級車」じゃなくて、本当に良かったです(笑。

2014年8月20日水曜日

ミステリ小説を仕分けする

冬と夏の年二回、休みを利用して部屋の片付けをします。
今回は、主に本の整理。
これまで本だけは甘い基準でストックしていたので、ちょっと目を離すといつの間にか狭い室内を占領しています。

本好きにとっては、また読み返すかもしれないと思うとなかなか本を捨てられないものです。
しかし自分のトシを考えると、娯楽系の本を読み返すことはほぼないし、仮に読みたくなったら図書館で借りればいいだけの話。
というわけで、先ずは高校生の頃から溜まりに溜まったミステリ小説を処分しました。


ミステリ小説に手を出したのは高一の頃からですが、最初はエラリー・クイーンとか、ディクスン・カーあたりから読みました。
今と違って誰の本が面白いのかさっぱり分からないので、手始めに取り敢えず古典という感じ。
もっぱら通学時や放課後に、たまに授業中にも隠れて読んだものです。
おそらく作品が懐かしいのじゃなく、読んでいた頃の自分が懐かしいだけなので、当時のは捨ててしまってもぜんぜん構わない。

ただ、その中で「マルティン・ベック」のシリーズは残しました。
初めて読んだ現代物のミステリーで、どれも忘れられないストーリーだったからです。
特に「笑う警官」の冒頭、犠牲者を乗せた無人のバスが、深夜の坂道を下っていくというシーン。
ストックホルムと言えば坂道、実際に坂道の多い町ですが、私の場合この小説で、紋切り型でないスウェーデンのイメージが植え付けられました。
それくらい印象的でありました。


最近知ったことですが、世界的に北欧ミステリーのブームだそうで、この影響で何十年かぶりにマルティン・ベックシリーズの新訳も出ています。
残念ながら、新訳の評判は悪いみたいですが・・・。

先日、タイミング良く、ブームの火付け役、「ミレニアム」の実写版をインターネットテレビで見ました。
内容的には決して悪くはありませんでしたが、如何せん私の好みではなかった。
ストーリーが、あまりに陰惨だったからです。
たとえフィクションでも、猟奇的なストーリーはもうゴメン。
現実にも、胸の悪くなるような事件が頻発してますから。
なのに昨今、小説といい、映画といい、こういうのが多くて困ってます。

ミステリに死体はつきものですが、死体のない作品もあります。
たとえばジョセフィン・テイ「時の娘」、もはや事件性すらない(笑。
私は小泉喜美子の端正な翻訳が好きなので、こういう小説は残したい。
そして同じ翻訳家つながりで、名作「女には向かない職業」とかライスの「大はずれ」に「大あたり」とかも。
大のお気に入り、ジェイムズ・クラムリーも捨てられない。
なにしろ小泉喜美子の作品には、ハズレがないからね。
小説を頭から読むのではなく、自分の気に入ったところだけを抜き出して読んでも楽しめます。

しかし、亡くなられてすでに30年になるのか。
お元気だった頃に、内藤陳さんとの暮らしを綴ったドキュメンタリー番組で見たことがありますが、非常に個性的な方だった印象があります。
不慮の事故で、若くして亡くなられたのがつくづく惜しまれる。
そして何より、毎年出版される大量のミステリ小説に埋もれ、世間から徐々に忘れられていくのが残念でなりません。



捨てる捨てるといいながら、やっぱり本は捨てがたい。
本を処分するなら、酒でも飲みながら、勢いでホイホイと振り分けていくのが一番です。

2014年8月17日日曜日

わたしも、ちょっと考えた

資本主義の終焉と歴史の危機

著者の本を読んだのは、これで2冊目。
従来からの主張を土台にして、一般向けにかみ砕いた内容でした。
資本主義は常に中心と辺境を必要としながら機能してきたが、その辺境も消失して、遂には終焉するに至るというお話。
資本主義のメカニズムを通して、近現代史を俯瞰するにぴったりの本です。


世界恐慌が起きる直前の、先進国における上層と下層の格差は想像を絶するほどに広がっていました。
ここから世界恐慌、第二次大戦を経て、荒れ果てた先進諸国に膨大な需要が発生し、長期の高度成長が持続することで、人類史上始めて豊かな中間層が出現することになります。
科学技術の進歩と商品経済の発展のもとで、誰もが楽観的に未来を信じることが出来た時代です。

しかし、それから間もなく石油ショックを引き金として、戦後の輝かしい資本主義が終わります。
「成長の限界」が意識され、新たな資本主義が必要とされます。
そして先進国の需要が減少し、製造業が後退する中で現れたのが、金融資本主義でした。
モノがだめならマネーで荒稼ぎをしようという発想です。
しかし、金融業は継続的な雇用を生まず、製造業は低賃金を求めて辺境に流れていった。
その結果、先進国の中間層は疲弊し、再び途方もない格差の時代に戻ってしまいました。

現在は、役割を終えつつある資本主義が、何とか延命しようと悪あがきを続けている段階だと言います。
アベノミクスも、その悪あがきの日本版に過ぎないので、仮に短期的に上手くいっても、必ずや他の弥縫策が求められるはずです。
率直なところ、アベノミクスとは自ら危機を回避しようとする人たちのために、時間稼ぎをもたらすための政策じゃないでしょうか。
少なくとも国民全員を救済しうる政策ではありません。
しかも、その賞味期限は終わりつつあるようにも見えます。

では、資本主義の次の時代、どのような社会体制を作るべきなのか。
著者は、成長を目指さない、安定した定常型社会を考えています。
しかし、それが経済を停滞させることなく、何とかやりくりしながらも、現在の社会水準を維持しようという意図ならば、いくら何でも不可能な気がします
なぜなら現在の社会制度が膨張する資本主義を前提とするのですから、この前提が外れる以上、現在の諸制度は大幅に修正せざるを得ないからです。

最悪、人口が半減することを前提とした社会をどう立て直すかという、いわば大戦直後の大混乱に匹敵するような状況での再構築です。
あまり暢気には構えていられないと思いますが、さてどうなのでしょうか。
個人的には、悲観も楽観もせず、想像しうる将来の暮らしに向けて、余裕のある今から着実に準備するしかないと思いますが。

2014年8月15日金曜日

愉快な盆休み

例年通り、何もしない盆休みが続きます。
命の洗濯というやつ。
適当に食べて、適当に寝る。ちっとも生産的でない日々が嬉しい。
せっかくだからどこか涼しいところへと、思わないこともないですが、そこにたどり着くまでの苦行を考えると、どんなに暑くても自宅で過ごす方が絶対にいい。

今朝、冷蔵庫の中を覗くと、ほとんど何も残っていない。
10日前に賞味期限切れの卵が2個、あるだけ。
生は無理でも、茹で卵にすれば、なんとか食べれられる。
固くなったバゲットを二つ割りにして乗っけてみました。


盆休みはテキトー、ということを大切にしたい。
工夫して何かおいしいものをと、考えを廻らせること自体がバケーションを台無しにするからです。

もっともこれだけでは食事が喉を通りそうにないので、一緒に飲み物を用意しました。
計量カップを取り出し、氷とビールを放り込んで豪快に。
酒と氷だけはふんだんにあるので、くそ暑い午後も楽しく過ごせます。
とにかく、盆休みは愉快だ。




2014年8月11日月曜日

オトナの夏休み映画大会



先ごろ購入したテレビにインターネットテレビを見る機能がついていて、オンデマンドで好きな映画が選べるということで、ものは試しと利用を始めました。
我が家の接続スピードはそれほど速くなく、加えてテレビは離れた部屋からの無線LANでつながっているので実用性に不安がありました。
ところが意外にも、普通のテレビを見るのと全然変わりなく、映像的には完全に満足できる状態です。
現状でテレビ放送に見たい番組はなく、ときおり旅行やドキュメンタリー系の番組を見てるだけなので、これはちょっと期待できるかと思いました。

しかし残念なことに、映画の品揃えが貧弱でした。
これじゃテレビ放送や場末のレンタルビデオ屋と大差ないレベル。
古今東西の名作が見放題だと思っていたら、関心のもてない作品ばかりが無駄に並んでいる印象です。
私の要求が無茶なのかもしれませんが、せめてクロサワ、オズにミゾグチ位は全作品が揃ってなければお金を払う価値がないと感じます。
だって実店舗を持たないからこそ、ロングテールに価値のあるサービスを提供できるわけですから。

と、文句を垂れつつも、何とか面白そうな映画を探してみています。
その中でも、これぞ思ったのが「裏切りのサーカス」。
原作が「北の国から来たスパイ」のル・カレだったので、筋書きは悪くはなかろうと。
それが見事に当たりでした。

映画の冒頭は、ロンドンから派遣された情報部員が、ブダペストのカフェで連絡係と交渉を始める場面。
コーヒーを持ってきたボーイが、テーブルの上に一滴の汗を落とす。
汗のクローズアップ。
パサージュの2階の窓が開き、老婆が怪訝そうな表情でカフェを見下ろす。
画面全体に一気に緊張が走り、そして物語が始る・・・。

映画というのは、こうでなくっちゃ。

特にこの映画、役者達が素晴らしかった。
主役は、「レオン」でジャン・レノ以上の存在感を放ったゲイリー・オールドマン。
その元上司役に、「エイリアン」の例の場面(!)で強烈な印象を残したジョン・ハート。
出番は少ないですが、いぶし銀の演技力で引きつけます。
「英国王のスピーチ」の国王役、コリン・ファースも地味ですが丁寧な演技が光りました。
その他にもいろいろと、いい役者が適材適所で配置され、無駄のない素晴らしいキャスティングです。

最後の場面もいいですね。
コリン・ファースの表情がよかった。
女性や子どもには見えにくい隠れたストーリーも描き込まれ、これぞオトコのイギリス映画。
映画ファンのおっさんにとって、数少ない観るに堪えうる映画でした。
目下大ヒット中のネズミ-アニメがどうしても理解できないへそ曲がりに、是非お薦めしたいと思う。

イギリスつながりで、「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」も観たのですが、これはようやく及第点という印象。
主役のメリル・ストリープは確かに上手いのだけど、演技がきれいすぎて何も残らない。いつもそうだが。
これでは仕事一筋に頑張るママさん首相という感じで、アカデミー主演女優賞は大甘だと思う(まあアカデミー賞自体がアレですが)。
特に強大な政治権力を握る者の、ドロリとした怖さが見えないのが残念。
ベタだけど、この役はヘレン・ミレンを使った方が良かったのじゃない?

そして評判のフランス映画、「最強のふたり」。
お子様にも安心して見させられる夏休み映画。もちろん全然食い足りない。
しかし「アメリ」を超える大ヒットということなので、そういう映画なのだと思えば得心がいきます。

最後に、邦画「小さいおうち」。
うーん、映画を観た時間を返して頂きたい。
決して役者が悪いわけじゃないです・・・。
映画なんだから、映画に相応しい作り込みがあると思う。

さて、次は何を観ようかな。