2013年7月30日火曜日

似たもの同士の社会

今年の春、ボストンで悲惨な事件が起きました。直後からツイッターを眺めてたら、とても印象的な発言がありました。曰く、アメリカではマラソンというのはエリートのスポーツで、マラソン大会を面白く思わない人たちもいるのではないか、という内容です。事件は政治的な動機ではなく、鬱屈した感情を持つ者の犯行だということを示唆してました。
言われてみれば、確かにそうかもしれません。毎日のジョギングやマラソンなんて、健康で自己管理能力の備わり、しかも余裕のある人たちしかできないスポーツですから。

だからといって、何の罪もない人々に、一方的な憎しみを持ちうるのでしょうか。アメリカ社会の実情は間接的にしか知りませんが、建前としての平等と、実態としての格差には、かなりの隔たりがあるように感じます。それで読んでみたのが、アメリカの白人社会を分析した「階級断絶社会アメリカ」という本。

アメリカの白人社会は新しい階級に二分されているといいます。私たちが典型的に想像する、高学歴の洗練された生活を営む人たちと、十分な教育を受けずその日その日を凌ぐのに精一杯な人たちとで。両者の格差は、もはや止めようがないほど広がっているらしい。

半世紀前ならば、富める者と貧しい者の差は、専ら財産の多寡だけで、文化的な側面ではさほど差がなかった。どちらも古き良きアメリカ建国以来の健全な精神を受け継いでいた。
ところが現在では、それらは前者の社会集団にのみ残り、後者の社会集団では崩壊し、文化の世代間継承すら難しい状況に陥っている、と。

本書では、もっと率直に、直裁的な表現で書かれてます。
口には出さないものの、誰もが薄々感じていた事実を、統計によって明らかにしたことで、アメリカ本国で大反響を呼びました。もちろん、それは普段から読書する習慣のある前者の社会集団の中だけのことでしょうが。

読んでいて、むかし見た映画を思い出しました。大学を卒業した若者たちがニューヨークに出てきて、数年後に再び出会って結婚するという映画。登場人物はそれぞれに知的な職業に就き、彼らと同じ境遇の者たちとの間で親密な交遊を繰り広げます。会話の中に学校名が頻繁に出てきて、それが人間関係を表す記号となっている映画でした。


社会が都市化し、先鋭化してくると、人々は孤立します。安心できる環境を作ろうと、それぞれ似た人たち同士で仲間探しが始まります。
地縁や血縁と無関係の都市社会では、好きか嫌いか、共通項の有る無しでコミュニティの成立が可能です。
世界は広がる一方で、地域や人種性別を超えた、似たもの同士の濃密な社会集団というものが、この世界のあちらこちらで出来つつあるのかもしれません。
しかし、構成員にとっては快適でしょうが、決してよそ者を受け入れることが出来ない社会ならば、ここから疎外された人々の恨みを受けやすくもあるでしょう。

2013年7月28日日曜日

正義感では解決できない

以前のことになりますが、東電から若手を中心に人材流出が止まらないという記事が出てました。それで危機感を持った会社側が、このほど管理職に一時金を支給することに決めたそうです。
かねてから心配していたことが現実化してます。東電憎しという世間の感情論を背景とした経営改革の弊害が、ここに来て顕著になってきたのでしょう。

原発を維持するにせよ、もしくは廃止するにせよ、原発が存在する以上は専門知識を有する多数の人材がこれからもずっと必要です。
それにもかかわらず、世間から嫌われ、給料は減らされ、そのあげく困難極まりない原発の処理を任されたのじゃ、誰だって辞めたくなりますね。
もしもみんな辞めてしまったら、いったい誰が残りの仕事を引き継ぐのですか?

いくら脱原発を唱えても、現にある発電施設が目の前から忽然と消えてなくなるわけじゃない。
巨額のお金と人材を投入して、長期的事業の一環として冷静に処理する以外、原発を廃止する手立てはありません。
だからこそ、最終的受益者たる私たち自身が応分の負担をし、処理を委ねられる人材や組織を維持する必要があります。
電気料金をドラスチックに引き上げ、従業員に十分な報酬を出して、困難な仕事に対するモチベーションを維持させなくてはなりません。一時金くらいでは、とても人材流出を止めることは出来ないでしょう。

つまり、脱原発を主張する以上は、電気料金の大幅な引き上げ、従業員の待遇改善要求とセットでなくては、脱原発運動は只のプロパガンダということになります。

それからもうひとつ。
推進派(必ずしも積極ではない)と、脱原発派の議論を眺めていて感じることです。
そこには、いかにして過剰なエネルギー消費を止めるのかという視点がない。
あたかもニコチン中毒患者同士が、どちらが低タールのタバコかを議論するばかりで、どうすればタバコを止められるかという議論につながらない。喫煙者だったからわかるのですが、軽いタバコなら大丈夫なんて考えていては、決して生活習慣は変わりません。
これまでどおり電気は使いたいけど、原発は嫌ではムシがよすぎるのです。



そんなことを人に言うと、絶対に嫌な顔をされるのですが、やはり正義を振り回すほうが楽しいのでしょうかね。

2013年7月22日月曜日

よい製品とは何か

景気が良くなっているようです。クルマを運転していても、最新型の高級輸入車が多く目に付くようになりました。百貨店では宝石や時計が飛ぶように売れているという。アベノミクスの恩恵がたとえ世間の一部であるにせよ、人々が安心しておかねを使うようになれば、今後、世相も自然と明るくなるのじゃないでしょうか。

今の消費トレンドを「三コウ消費」と呼ぶ向きもあるそうです。高品質で、「好き」と感じられ、明確な効果を得られるものであれば、たとえ高額であっても消費者に選ばれているという。要するに、いい品ならば高くっても積極的に買うようになったということですね。

しかし問題は、いい品とは何かということで、そこをちゃんと押さえてないと、売り手に乗せられただけの浮ついた消費ブームに終わります。
それで先日、「よい製品とは何か」という新刊本を読みました。
アメリカの大学で、「よい製品、悪い製品」というエンジニアの卵に向けた講義メモを土台にした本だということです。
ひとくちに「よい製品」といっても、明確に定義するのは難しい。それを長い実務経験で得た知見をもとに、解き明かしていこうというのが本書の内容です。

本書の最後に、よい製品か否かを判断するチェックリストが列挙されています。これらの項目を点数評価して、高い点数を得たものが「よい製品」であると考えてよいでしょう。客観的評価になじみやすいものもあれば、採点者の主観に左右される項目もあります。

パフォーマンスとコスト (適切な値段と価値)
人になじむか (身体や感覚にマッチするか)
クラフツマンシップ (よく考えられ、作り込まれているか)
感情に訴えるか (喜びや感動があること)
エレガンスと洗練 (美しいこと)
象徴性と文化的価値観 (属する文化や価値観を適切に反映するか)
地球への影響 (環境に悪影響を及ぼさないこと)

これは本来、製品を作る側のチェックリストですが、消費者としても大切な視点になります。そして、これら製品の持つ要素のなかで何を重視するのかということが、消費者側からの本書の読み方だとも思う。
どれもが製品の価値を決める要素として重要ですが、リストのすべてを満たす必要はなく、ひとつでも自分の個性的な物差しに合致すれば、それが自分にとっての「よい製品」です。
あまりにも商品の選択肢が多い時代、ある程度割り切らないと、何を選んでも不満が残りますからね。

2013年7月11日木曜日

夏の贈り物



睡眠不足の日々が続きます。エアコンをかければ楽なのですが、出来るだけ体の方を順応させたいので、もうしばらく辛抱したい。まだ蚊に悩まされていませんが、本番を迎える前に今年は蚊帳を吊ってみようかとも考えてます。

あまりに暑すぎる過酷な毎日ですが、悪いことばかりじゃありません。野菜たちの成長がいきなり加速し、早朝から手入れに追われる忙しさ。大量に種を播いていたバジルは、あまりにたくさん発芽したため、苗を片っ端から間引いて水に浸し、特別に調理することなく生のままで食べてます。

今日の朝食。トーストだと喉につっかえるような気分なので、簡単な和食を作りました。おかずは菜っ葉と冷や奴、食欲のない時にはこういうあっさりしたのが一番です。週末は気合いを入れて、大量のバジルでタイ風カレーでも作ってみましょう。

2013年7月9日火曜日

ウメヨ、フヤセヨ!

先月の初め、近所に新装開店したスーパーに行ってみると、ヨーグルト売り場が拡張され、何種類ものヨーグルトがずらりと並んでました。もしかしてヨーグルトブームなんでしょうか。値段を見るとかなり強気の値付けです。そういう中で、気になる製品を発見したのでひとつ買って帰りました。


本来は必要なかったのですが、同じ会社の種菌から作り続けてかれこれ10年近くなるので、果たして我が家の味とどれほど違いがあるのかという興味があったのです。結果、ほとんど変わりなく、製品の方が若干粘りが強いかなという感じです。工場の製造過程に違いがあるかもしれないので、今度はこのヨーグルトを使って、更に我が家の環境で作っています。

ちゃんと消毒ができて、密閉できる小さな容器を用意します。ミルク1合あたり、ヨーグルトを"ひとしずく"入れて、充分に混ぜます。容器に蓋をして、室温20ないし30度をキープできる場所に1日放置、ミルクが凝固するの待つ。できあがったら冷蔵庫で更に半日以上熟成させ、好みの状態になったら食べる。その際に、先ほどと同じ作業を繰り返し、再び新しいヨーグルトを作っておく。製品のパッケージには、これでヨーグルトを作らないでくれ、と書いてあることからすると、失敗する確率が高いのでしょうか。うまくいくよう同好の士に、私の経験をアドバイスするのですが、皆さんなぜか言ったとおりにしません。信用がないですね(笑。温度管理と衛生管理、そしてリスク分散がすべてです。



ヨーグルトの用途は思いのほか広い。サラダドレッシングはもちろんのこと、南アジア系、中近東系の料理にもよく使います。それから水抜きをして、濃厚なスウィーツを作っても喜ばれます。


2013年7月7日日曜日

入院のポット


妻が入院したため、このところ病院通いをしてます。腰痛の治療なので、身動きが不自由であること以外は、基本、元気です。それでも寂しがるといけないので、晩ごはんは弁当持参で一緒に食べるようにしています。

病院の食事が、意外に美味いので驚きました。薄味なのは仕方ないですが、なかなか手の込んだ味付けで、市販の弁当よりずっといけます。私が怪我で入院したときは、あまりに食事が不味くて、妻の差し入れてくれたコーヒーとお茶だけが慰めだったのとは雲泥の差です。

そして今回、私が彼女にコーヒーとお茶を差し入れる番です。もちろん院内にも自動販売機がありますが、妙な添加物が入っているので嫌いないんです。決して上等じゃないですが、普段から飲み慣れた、家のコーヒーとお茶が一番です。

赤と青のポットそれぞれに、お茶とコーヒーを入れて持って行きます。赤は私、青は妻が、どちらも子供の頃から世話になったポットで、ときおりパッキンを交換しながら使い続けている。真空チューブのガラス製なので、目方が軽い上に、保温時間が長く、液体に金属の匂いが着かないのが取り柄です。逆に割れやすいというのが最大の欠点。私は入院中に2度も落として割りました。

古いアメリカ映画を見てると、しばしば同じポットが登場します。大きさや色はそれぞれですが、職場の机の上や、クルマの中にさりげなく置かれてます。小津安二郎の映画にも赤い薬罐が画面の差し色として使われたりしますが、このアラジンもちょうどそういう役割だったのでしょうか。殺風景な事務所の景色の中で、ひときわよく目立ちました。アメリカという国が、もっとも豊かで、実りの多かった時代の製品ですね。

2013年7月2日火曜日

単語を暗記する週末

再来年受験の姪がおりまして、理系科目は得意だけど文系がさっぱりなんです。本人曰く、数学なんかは悩むことなくサクサク解けるけど、英語や社会の暗記が全然駄目、なんだとか。その下の子も同じなので、姪たちはあちらの家系の遺伝が強いみたいです。

それでいい手段はないかと相談を受けたのですが、私は姪とは逆に数学で無駄に苦労して、一方の暗記にはそれほど抵抗がなかった。語彙が少ないと何も出来ないのだから、とにかく単語集を常に持ち歩いて、友達と一緒に集中的にやれば何とか形になるのじゃないの?と、何とも頼りない助言しか出せない。

しかし言いっぱなしじゃ申し訳ないので、適当な教材がないものかと調べたら、選ぶのが難しいくらいたくさん見つかりました。私の頃は「シケ単」とか「でる単」とか呼ばれてた単語集一択だったので、何も悩む必要がありませんでしたが。で、これはと思った教材を実際に自分で試してみることに・・・、今更ながらの英単語の暗記(笑。

受験に必要な1900語を、金曜の晩から始めて、休日をすっかり潰して一通り回してみました。しっかりと記憶に定着していたのは8割程度で、残りは語源や語感で何となく辿り着けたという結果。もちろん、試験特有の出題範囲はさっぱりと忘却しております。

英語を必要とする生活をしていない割には、案外と覚えているものです。なんといっても、受験生だった頃に比べ、今は外来語が日常生活の隅々まで浸透している影響が大きい。それに加えて、昔は洋楽全盛期だったので、耳で聞いた歌詞を辞書で調べて覚えていたことも、いい肥やしになってますね。

伝え聞いた話では、以前の頃と違い洋楽の人気が全然ないんだそうです。10代の頃に覚えた曲は、忘れようとしても忘れないものですが、そういう楽しい記憶のない暗記というのは辛いことでしょう。ただ、現在は使い勝手のいい教材が豊富にあるので、そういうのを最大限利用して何とか苦手意識を克服できるといいのですがね。

それにしても単語の暗記は酷くつまらない。あまりにも退屈で、している最中にもかかわらず、何度も眠気に負けて気を失いそうになりました。

100年の人生

テレビCMで”人生100年”という言葉が出てきて、ちょっとびっくりしました。数年前から、100年を前提に人生設計すべきということが語られるようになってきましたが、もはや常識のレベルにまで上がってきたということでしょうか 人が当たり前に100歳まで生きる時代が到来するなんて、少し...